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春へのいざない

去年の今時分に、教会に関する記事(『聖なる空間』)を書きまして、
その中で、椿山荘の向かいにあるカトリック関口教会を紹介しましたが、
その椿山荘の脇、野間記念館の建っている路地を入っていくと、
そこに永青文庫という、旧熊本藩主細川家伝来の美術品を収蔵している、
小さな美術館のような施設があります。

そこで開催中なのが、日本初の春画展
話題沸騰で、押すな押すなの超満員です。

“春画”とは、江戸時代に発展した絵画の1ジャンルで、
性描写がテーマにはなっていますが、芸術性の高い“浮世絵”です。
主に、異性がさまざまな体位で愛を交わす場面を描いています。
というと、ポルノのようなものかと思われるかもしれませんが、
実際はそのような下品なものではなく、
春画の表現は「エロス」はあるけれど「いやらしさ」がない感じです。

北斎 春画 北斎作。サムネイルで拡大可ですが、当然加工しています。
http://大川博.jp/article/391696740.html

私はもともと春画好きだったわけでもないのですが、
美術系のものに関心の高かった祖父が孤独死した際、
遺品を整理していると、複数の春画の専門書が出てきまして、
それをパラパラ眺め、興味を持ったのでした。

第一印象は「エロス」でも、もちろん「いやらしさ」でもなく、
「楽しげだな~」というものでした。
そこに描かれている人たちは、
一様に楽しそうで、また真剣に性を謳歌しているように見えたのです。
これは、性の快楽を禁忌としてきたキリスト教とは対極の描写で、
当時の日本のおおらかさが感じられます。

春画は享保の改革で禁止されたのですが、
市民の楽しみというか、需要自体はなくならなかったので、
幕府の眼を盗んでどんどん制作されました。
次第に眼が肥えてくる消費者を喜ばせるため、
制作する絵師たちは構図に工夫を凝らし、
着物の柄や髪形など、細部に独創性を発揮した春画を出しました。
おそらく、反権力というか、幕府の眼を盗んでというところが、
描かれている男女の躍動感につながっているのだと、私は思っています。

非合法なので、ふつうの浮世絵のように、絵師のクレジットはありません。
しかし、社会科の教科書で大真面目に習った、葛飾北斎とか歌川國盛などが、
春画では「鉄棒ぬらぬら」とか「淫水亭開好」などという、
わりとふざけたペンネームを使って、春画に取り組んでいたようです。
なにしろ非合法なので、なんでもありで、
ときに男女に限らず、同性間や、「蛸と海女」(葛飾北斎)のようなモチーフもあって、
エロスというよりは、洒脱な「遊び心」を多く含んだ美術です。

蛸と海女 これもサムネイルで拡大可ですが、当然加工しています。
http://matome.naver.jp/odai/2132789438250354201

浮世絵が、海外の印象派の画家たちに影響を与え、
日本以上に海外で評価されていることはよく知られたことですが、
春画も浮世絵の一種なわけで、
昨年、ロンドンの大英博物館で開催された史上最大の春画展は、
のべ9万人が訪れるほどの大盛況だったそうです。

しかし、情けないのは、芸術性が高く、以前から人気があったにも関わらず、
これまで、日本国内の美術館で春画展が開催されてこなかったこと。

企画自体はあったのかもしれませんが、
春画という内容が内容だけに美術館が企画に二の足を踏み、
イメージを大切にするためにスポンサー企業も集まらないという、
まぁ、いわゆる日本的な理由で、長らく国内開催ができませんでした。
当時の日本に比べ、おおらかでないというか。
はあぁ、情けない。
日本文化を紹介する場が国内になく、ロンドンのそれは大盛況だなんて。

思えば、私は「魅惑の・・・」という仏像紹介のシリーズを書いていますが、
明治初期に、廃仏毀釈といって仏像が次々に破壊された時期がありました。
それから一転、いま、私たちが仏像を拝むことができるのは、
アーネスト・フェノロサという、仏像愛好家なら誰でも知っている哲学者が、
日本美術の芸術性を称賛してくれたおかげです。
はあぁ、情けない。
日本文化を評価してくれるのが、いつの時代も外国人だなんて。

余談ですが、この記事を書くにあたり、どれくらい説明的なスタンスが必要なものか、
春画というものの知名度は一般的にどんなものかしらと、
同僚の co-K さんに「春画って知ってる?」聞いてみましたが、
彼女は春画を知らず、春画という字面から、
チューリップなどの花が咲いた、「春の絵」を連想したようでした。
しかし、その後、彼女は素早くネットで検索したようで、
数秒後には「おおっ!これはっ!」と声を上げ、
「急に興味が出てきましたっ!」とのこと。
ふふふ、またひとり、春画を知る方が増えました。
この人は、もともと無類の猥談好きだったとはいえ、
春画の魅力をお伝えする活動に微力ながら貢献でき、私も光栄です。

永青文庫の『SHUNGA 春画展』は12月23日まで。
大きな施設ではないうえ、そこそこ混んでいるので、
あんまりゆっくりは鑑賞できないかもしれませんが、
個人蔵が多い春画の本物を見られる機会は稀有です。
私が行ったときはカップルも多くいましたので、そういうのもオススメです。

 永青文庫 『SHUNGA 春画展』 ⇒ 特設サイト

[SE;KICHI]
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