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風化させないこと

何か事件や事故が起こった時、当事者周辺を中心として、
『事件を風化させない』というような論調が広がることが多いですよね。
結果として、その事件を想起させるような記念碑とか、
犠牲者が出ている事故などの場合は慰霊塔のようなものが建ったりします。

まぁ、言葉を選びつつ、おそるおそる述べますが、
それってどうなのかと、密かに思っているのです。

出来事が“風化する”というのは、
人々の記憶から消えていくという意味でしょうか。
どんな出来事であれ、時間が経てば人々の記憶が薄れていくのは当然で、
それは自然なことだと思うのですが、
「風化させてはならぬ」ということは、その摂理に抗って、
忘れないように努力しようということですよね。

もちろん、出来事には多分に教訓が含まれますから、
その教訓を忘れないようにしよう、今後の糧としようという意図なら分かるのです。
たとえば、大きな震災を経験した場合であれば、
その経験から、防災や避難などの技術的な部分が向上することでしょう。
そういう意味で、教訓を生かすということは大切です。
しかし、世の中の風潮を見ていると、
その出来事に付随した、感情に訴える部分、
つまり「最愛の息子を亡くした母」とか、「結婚式を控えて逝った彼女」とか、
別の切り口では、「両親を失いながら健気に頑張る幼児」とか、
そういう“お涙頂戴”の部分を語り継ごうとしているように見えます。

教訓ではなく、感情の部分を「風化させてはならぬ」と頑張ると、
それでも不可抗力として緩やかに風化していったとき、
最後には「なんか、よく覚えてないけど、えらい悲しかったよねぇ」という、
あまり役に立たない悲壮感の部分だけが残ってしまうように思うのです。

私は、出来事から教訓を抽出したら、
それ以外のところは捨てるべきだと思っています。

教訓の抽出は済んでいるわけですから、残っているのは感情だけ。
辛い体験をされた方には同情もするけれど、
感情に任せて、
その辛い記憶を泣きながら見つめ続けたところで、
幸せはやって来ないと思うからです。

前を向くためには、感情を止め、その記憶を手放すことが、
どうしても必要だと思うのです。

クリスチャンで知られた作家に、曽野綾子さんという方がいますよね。
彼女は1931年生まれだそうなので、今年で84歳。
つまり、10代の多感な時期に戦争を経験した計算になります。
その彼女は、終戦直後の何度かの東京空襲の際、
次々に犠牲者の出る周囲の光景を目の当たりにし、
軽く砲弾恐怖症のようになったそうです。
現在で言うところの心的外傷後ストレス障害みたいなものでしょう。
泣いてばかりいて口も利かず、母親を困らせたようですが、
その場面で、周りの大人がどう対処したかと言うと、
みんなで協力して、彼女に空襲のことを忘れさせようとしたそうです。

そりゃそうするでしょう。
空襲なんて、現代を生きる私たちには想像すらできない、
それはそれは恐ろしい出来事でしょうけれど、
その出来事の悲惨さや壮絶さにフォーカスしたところで、
決して前向きにはなれはしないでしょう。

事実、当時13歳の少女は、その光景を見て心身のバランスを崩したわけであり、
その光景を忘れないことが本人のためにならないことは明らかです。
悲しみを超えて前向きになるためには、
あえてその光景を忘れる以外、有効な治療法はないでしょう。
そういう意味で、出来事が適度に風化することは、必要なことだと思うのです。

オマエに何が分かる、といわれることでしょう。
もちろん、被害に遭った当事者の方は、
忘れようにもなかなか忘れられるものではないでしょう。

しかし、それでもやはり、過去に味わった悲しみをずっと見つめるより、
薄ぼんやりしていても、楽しかった記憶や、
今後やってくる明るい未来を期待して夢想したほうが、
明らかに幸せだと思うのです。

私は「人生は修行である」と何度か言ってきました。
(c.f.『隗より始めよ』,『板を下せば?』,『ロマンチックな世界観』)
しかし、別に人生が、
拷問のような修行の連続であると言っているわけではありません。
智慧が必要となるような、苦しい修行めいた局面もある半面、
楽しい、嬉しい、幸福な局面もあるはずです。
何を見つめて生きていくかは本人次第です。

あの出来事を語り継ぎたい、後世の教訓としてほしいという、
ある種の使命感は分からなくはありません。
それもまた必要なことでしょう。
でも、その必要性を超えて、
未来に目を向けることは、
とても大事なことです。


70回目の終戦記念日でしたね。
安倍首相の談話が意味深いものだったかどうかは別にしても、
未来志向で、お互いの関係をよくしようと考えるのが正しい道でしょう。
靖国神社への、首相の私費での玉串奉納に文句を言われていますが、
隣国は済んだことをいつまでほじくり返すつもりなんでしょうか。
70年も前の隣人との小競り合いを、いつまでガタガタ言っているのかと、
長々語りましたが、実は言いたかったことはそれだけです。

[SE;KICHI]
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ですよね。

本当ですよね。
戦争のことなどは私には分かりませんが、
事故でお子さんを亡くされた方などが、
そのことに縛られて人生を棒に振っているのを見ると、
なんだか残念な気分になりますね。
・・・でも、そんなこと言えないし、
そう思う自分はおかしいのかしらと、
ずっと悶々としていたのですが、
同じ意見の方がいらっしゃったみたいで、
安心しました。

そうでしょうか。

ええ~ そうですかぁ?
てか、そうかもしれないけど、キツイこと言いますね。
だって、その立場の人の辛さって、経験してない私たちには分からないですよね。
その人だって、好きで打ちひしがれてるわけじゃないでしょうし。
ちょっと残酷なんじゃないですか?
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