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盟三五大切

富山って、湿度の高い気候と、
常識にとらわれやすい県民性に多少の難があるとは思いますが、
それ以外には、観光資源にも恵まれているし、物価も安いし、
なかなか豊かな県なのだと思っています。

もちろん、中途半端に田舎なので、
伊勢丹とかヨドバシカメラとか、とらやとか資生堂パーラーとか、
私が東京に住んでいた頃によく通っていた店は、富山にはありません。
山陰ほどではないにしろ、チェーン店も出店されなかったりします。
それは、まぁ、残念なことではあるのですが、人口も少ないですし、
会社の経営を考えた場合、仕方がないことなのだろうと思います。

しかし、私が、富山が都会じゃなくて心から残念だと思うのは、
歌舞伎などの興業が行われる機会が皆無だということ。
私は、もともと、わりと歌舞伎が好きなのですが、
富山にいると、歌舞伎を見るためには東京や大阪へ出なくてはならず、
なんというか、その面ではやや不幸に感じます。
私の父は、私と違って、どちらかと言えば芸術とか芸能の方面に関心の薄い人でしたが、
そういう父ですら、大学が京都だった関係から南座にはちょくちょく行っていたようで、
その気軽さに比べると、富山からだと交通費もかかりますし、
富山県民にとっての歌舞伎の敷居はかなり高いようです。
そういうわけで、、富山の古典芸能レベルはかなり低いと言わざるを得ませんし、
私は富山の、そういう意味での文化水準の低さを呪いたくもなるのです。

私が初めて歌舞伎を観たのは、いつだったか忘れましたが、
盟三五大切 かみかけてさんごたいせつ という演目だったと思います。

 三五郎は、父が仕える殿様のために100両を工面するよう、父から頼まれます。
 そこで三五郎は、妻である芸者・小万と共謀し、美人局作戦を思いつきます。
 ちょうど、小万に源五兵衛という武士が入れ込んでいたので、
 これに目をつけた三五郎夫妻は、源五兵衛が持っていた100両を騙し取ります。
 騙されたと知った源五兵衛は怒り狂って殺人鬼に変貌、
 小万も殺害され、三五郎も自害に追いやられます。
 しかし、実は、三五郎も源五兵衛も知らなかったのだけれど、
 三五郎の父が仕える殿様というのが源五兵衛のことで、
 その100両は、源五兵衛が別ルートで工面したもの。
 結局のところ、三五郎は父の主・源五兵衛のための金を、
 偶然にも源五兵衛本人から騙し取ったということで、
 その結果、誰も死ぬ必要はなかったのに妻を失ったという話。

あらすじだけを並べてみると、
まるで小林稔侍とか中村梅雀がやってる2時間ドラマの最後20分のようですが、
まぁ、そこは歌舞伎ですから、別に何かを決着させようとはしませんし、
みんな死んじゃうわけなので、ハッピーエンドというわけでもありません。
この演目の見所は、あらすじではなく、
騙されたと知るや冷酷無慈悲な殺人鬼になる源五兵衛の豹変ぶりです。

ところで、歌舞伎の最大の魅力って何でしょうか。
私は、感情表現のダイナミックさだと思うんです。
私たちの日常生活は、喜怒哀楽を一部しか出せません。
すごく感動的な映画を見ても、なかなか嗚咽するほどには泣けないものです。
大笑いしたり号泣したり、そういうことをしようにも、
社会的制約というか、「いい大人が」というストッパーがかかって、
変に思われない程度に、感情の一部しか表現できないんですよね。

歌舞伎は、目いっぱい気持ちを表現します。
いま紹介した盟三五大切では、
騙された源五兵衛が、私たちの社会ではありえないほどに大激怒しているわけです。
それを見ると、人間って、本当はこんなに感情をあらわにできるんだなと感心します。
人間としての感情の振れ幅を思い出させてくれる感じです。

だいたい、私は、歌舞伎を見ると、かなり感情移入して観てしまうほうです。
先述した盟三五大切だったら、怒り狂う源五兵衛になりきって、
「三五郎め、許さ~ん!!」と、
過呼吸になるくらい全身で感情移入してしまいます。
たぶん、普段の生活で感情を爆発させられない分、源五兵衛になりきるのでしょう。

冷静に考えて、裁判制度があれば死刑になるであろう殺人鬼・源五兵衛ですが、
感情移入中の私は、結末は知っているのに応援する気分で、
歌舞伎の世界に入り込んでしまいます。

私が初めて盟三五大切を観たときの源五兵衛は九代目松本幸四郎だったと思います。
その鬼気迫る演技自体は印象深かったのですが、
なにしろ、初めての歌舞伎だったのであらすじもよく分からず、
その消化不良の感じが気持ち悪かったので、
その後は歌舞伎を観る前にはあらすじを勉強することにしました。

その後、今から10年ほど前に、中村吉右衛門の源五兵衛を観ました。
この方は鬼平犯科帳で有名なあの方ですが、
鬼平犯科帳で見た通りの浪人然とした感じで登場し、
そのあとの殺人鬼になった場面とのコントラストが見事で、圧倒されました。
やはり、あらすじを知っていると安心して演技に集中して見られますし、
「吉右衛門、いいわぁ~」という見方に変わります。
ところで、その時の小万役が五代目中村時蔵だったのですが、
これはこれで「時蔵、いいわぁ~」という感じ。
まぁ、観る私のほうもこなれてきたということでしょうか。

「いいわぁ~」と言いましたが、
今まで観た盟三五大切の、私にとって“ベスト源五兵衛”は片岡仁左衛門です。
盟三五大切 http://thebell.exblog.jp/i37

仁左衛門が妖艶で妖艶で、凄いです。
「仁左衛門、いいわぁ~」って感じなんですが、
そう言うことすら恐れ多いほどの演技だと思います。
騙されたと知った源五兵衛は怒り狂って我を忘れ、
赤ん坊を、その母親である小万自身の手で殺させてみたり、
切った小万の首を持ち帰って食卓に置いて、差し向かいで茶漬けを食べたり、
盟三五大切の後半は映画ならR指定と思われるような猟奇的な殺戮シーンですが、
その残忍なシーンですら、仁左衛門の演技にかかれば、
怒り狂う源五兵衛を、美しくさえ感じさせます。

なんというか、昔話の『雪女』とかみたいな、目が離せなくなる感じ。
仁左衛門はもともと二枚目で、目が離せない感じ、ありますからね。

うふふ。
なんかつまらない話をしてしまいましたが、私は楽しいです。

富山は田舎なので、それを上演する場所もないですし、興行も来ません。
それどころか、富山の人はこの歌舞伎の文化に触れる機会がないために、
歌舞伎のあらすじなどを知らない方がほとんどで、
私は、歌舞伎について話す相手がいなくて本当に寂しいです。
田舎の人は、東京や大阪の人に比べ、伝統芸能に触れる機会が限られてしまい、
機会の平等という意味ではちょっと不公平ですね。

あぁ、最近は忙しくて行けていないけれど、
久々に歌舞伎を見に行きたいなぁという話。

[SE;KICHI]
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