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「風が動く街」

昨年の春、室生犀星文学賞について書いたことがありました。
先日、第2回の室生犀星文学賞が発表になり、
今回は、それについてあまり書く予定はなかったのですが、
今年も書いてほしいとリクエストがありましたので、書いてみます。

今回の受賞作は緋野由意子さんという埼玉県の女性が書いた「風が動く街」。

主人公は東京の会社に勤める30歳代の女性。
主人公は幼なじみの男性と数年間交際していたのですが、
男性から「実は他の女性と結婚する」と一方的に振られた過去を持っていました。
その男性の訃報を聞きつけたところから始まる、結婚に関する物語です。

昨年の受賞作「二日月」について、
確か、坂東眞砂子に作風が似ていると書いたと思いますが、
今年の受賞作である「風が動く街」は、そういう感じではありません。
その理由として、Sex に関する押し出しが強くないという面もありますが、
それよりも、何というか、描写が墨絵的というか、
鮮明に描かないことで、逆に関心を引き付ける、そういう技術を感じました。

作中、過去と現在を行き来しながら、
主人公が男性と結婚できなかった理由が明かされるのですが、
特に過去に関する描写は、過去であるが故にぼかして表現されていて、
むしろ詩的な感じです。

そして、それは、詩人でありながら散文を遺した室生犀星に、
きわめて近いと言えます。

それにしても、
現在の状況は過去に原因があるという考え方は、
私は普段の日常生活においても、わりと確立された真理だなと思っているのですが、
この作品の主人公が男性と結婚できなかった理由が遠い過去にあるなど、
文学の題材に使用されているのを目にすると、
本当にそのとおりなのだなと、改めて感じ入るものがあります。

さて、作者の緋野さんは64歳。
昨年受賞の南綾子さんもそうですが、30歳代後半に
「このまま子育てで時間が過ぎて、年をとってしまいたくない」
と思い、
地元で行われた文章教室に参加し、それ以来、執筆を重ねてきた方です。

今年1月の芥川賞では、黒田夏子さんの史上最高齢受賞が話題となりましたが、
いつかチャンスが来ると信じてコツコツ努力すると、
最終的に報われるものなのだ

と、身をもって教えてくれますね。

例によって「風が動く街」も出版されないでしょうが、
オンラインでは読めますので、機会があったらお読みになってみてくださいね。

[SE;KICHI]
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