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伊勢大輔さん

初釜のときの話。
と言っても、今年の初釜はカジュアルな感じでした。
なぜなら、初対面でしたが、今年の正客は気さくで話し好きで、
亭主がお見えになる前から、よくしゃべる方だったから。
そのため、私たち相客は、知らない者同士であったにもかかわらず、
わりと早くに打ち解け、談笑したりなんかして亭主を待ったのでした。

さて、この日、茶室の違い棚には、小さな一輪挿しが飾られていました。
それは瓢箪の形をした高さ10cmほどの一輪挿しで、
その側面には百人一首のような意匠が描かれていました。

茶席なのでスマホなどを持って入るわけにはいかず、
その写真などはないのですが、イメージとしてはこんな感じ。
(以下、https://www.samac.jp/search/poems.html)

『02・持統天皇』

これは江戸時代に作られた小倉百人一首の絵札ですが、
草書で上の句だけが書かれているというのがポイント。
これだと、ちょっと下の句の知識が必要になりますよね。
歌の部分の文字は、草書だと読みにくいかもしれませんが、
これが『持統天皇』だというのは読めますよね。
実際に一輪挿しに描かれていたのも『持統天皇』で、
これが、この筆致のまま一輪挿しの胴部に描かれていたと思ってください。

このような一輪挿しを茶室に飾るということは、通常はありませんから、
正月というか、初釜だからという、特別な趣向だったのだろうと思います。
そして、その日、このような一輪挿しは、
違い棚の『持統天皇』以外にも茶室内に何個かあって、
いろいろな場所にチョコチョコ置かれていました。

それがこれ。

『09・小野小町』 『57・紫式部』 『61・伊勢大輔』

左から、小野小町、紫式部ですが、右端は……誰でしょうか。

茶席とはいえ、初釜。
それは正月のイベントみたいなものですから、
和歌などに造詣の深くない方もいらっしゃっていたようで、
その日、相客となった40代と思しき初対面の女性は、
「……いせ……だいすけ? 女性じゃないの?」と騒ぎ、
「多様性なのかな? こういう衣装の、実は男性なんだね」と、
ちょっとバカなんじゃないかと思うような自己完結をしていました。
そんなわけないだろ。
この人は『いせのたいふ(伊勢大輔)』という、紫式部のちょっと後輩にあたる人で、
地味ですが、白河天皇の傳育などをしていた、間違いなく女性です。
百人一首のこの歌は、藤原道長に勧められて即興で詠んだ歌として有名ですよね。

私は、密かに衝撃を受けていました。
小学生の時、百人一首、覚えませんでしたかね?
私がたまに覗いているGIRLS REPORTという女子トークサイトですら、
「百人一首で好きなのは?」なんていうテーマのスレッドがあり、
トピ主が「私は『かくとだに』です」と書き込んでいたり、
それに呼応して、ひとこと「『せをはやみ』」と書き込む人がいて、
またそれに、さまざまな理由で賛同する人が現れたり、
それなりに盛り上がっています。
そういうのを眺め慣れている私としては、
たくさんの人が、思い思いに歌を解釈して披露するのは当然という感覚だったため、
伊勢大輔を知らないばかりか、
「女装した男性ではないか」という珍説を真顔でブッ込んでくる妙齢の女性に、
それはもう、びっくりしたのですが、
ちゃんと、優しく、「○○大輔」という呼び名だけど、女性なんだよと教えてあげました。
ちなみに、『かくとだに』 は、藤原実方朝臣という人の歌で、「こんなにもあなたを想っているということを、告白すらできずにいます」のような恋の歌、 『せをはやみ』は、崇徳院の歌で、「滝と同じように、たとえ一度は別れてもいつかかならずまた逢おう」という、やや達観したような歌です。

ところで、例の小さな一輪挿しは、全部で5個のセットらしく、
帰りがけの玄関で5個目を発見しまして、なんと、それは、猿丸大夫。

『05・猿丸大夫』

ここにきての男性というか、おじさんの初登場に私も驚きましたが、
「大輔」と「大夫」は多少似ていますからね、
例の女性は大いに混乱して、私に、
「これは……おじさんに見えるけど、おじさん……でいいんですよね?」
などと聞いていました。

いやいや、そのころ、性の多様性なんてないですから!
というか、「おじさんに見えるけど、おじさんだよね」って、
どんな日本語だよ、それ。

[SE;KICHI]
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