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飛鳥の執念⑰ ~大津と大伯(後編)

前編では大津と大伯の姉弟のうち、弟の大津皇子について紹介しました。

姉の大伯皇女も、弟と同じ、大海人皇子(のちの天武天皇)を父に持ち、
大田皇女を母として661年に誕生しました。

しかし、前回も書きましたが、母・大田皇女は大伯が6歳の時に亡くなってしまいます。
そして、おそらく、大伯が弟の大津の母親代わりとなったのでしょう、
万葉集などからは、大伯が弟の大津に深い愛情を注いでいることが伺えます。
それは、前回も少し触れましたが、
姉弟の継母となった鵜野皇女が、
姉弟に、実子と分け隔てなく愛情を注ぐということをしなかったため、
おそらく家庭内でも肩身の狭かった姉弟は、
互いに肩を寄せ合うように育ったゆえでしょう。
とにかく、大伯の、大津に対する気遣いの深さには感銘を受けます。

さて、壬申の乱で兄の子・大友皇子を滅ぼした大海人皇子は、
即位して天武天皇となりました。
天武帝は、伊勢神宮の天照大御神を国家の祖先神と定め、
娘である大伯に、伊勢神宮において天照大御神に仕える斎王になるよう命じました。
まぁ、斎王というのは伊勢神宮における巫女みたいなもので、
未婚の内親王がなるものです。
おそらく、大伯の血筋のよさと、その清廉さから白羽の矢が立ったものと思われます。

こうして大伯は伊勢神宮へ下向していくわけですが、
弟を残し、都を離れるその心中はいかばかりであったでしょうか。

そして、686年9月、父・天武帝が崩御し、
その3週間後に大津の謀反が発覚するわけですが、
このタイミングで大津は謎の行動をとります。
天武帝の殯宮(葬送)という、かなり重要な国家行事の最中に、
姉・大伯に会うために伊勢まで出かけたことです。
みなさんも、昭和天皇崩御の時期のピリついた雰囲気、覚えてますよね?
大津は、皇太子に次ぐ地位にあったにもかかわらず、
天皇が崩御した直後のああいう雰囲気の中、なぜ大和を抜け出したのでしょうか。
そんなことをすれば、本当にただ単に姉ちゃんが恋しかっただけだったとしても、
みんなから「おい、あいつ、なんだよ?」って思われるに決まっているのに。

さて。
姉の大伯にしてみれば、
小さな頃から肩寄せ合って育ってきた弟が、
父親である天武帝の葬送が始まったというのに、
すがるような思いで自分を訪ねてきたということになります。
その弟が、大和に戻るときに大伯が詠んだ歌が万葉集に収録されています。

「二人行けど 行き過ぎ難き 秋山を いかにか君か ひとり越ゆらむ」

これは、「二人で行っても越えにくい秋山を、
弟は弟は独りで、どうやって越えていくのだろうか」というような意味で、
真相はどうであれ、
大津の将来に困難しか見えないことを案じている歌です。

そして、実際、大津のこの行動に鵜野皇后ほか、誰もが疑いの目を向けたため、
大津は当然のように捕縛され、その翌日に命を落としたのでした。

そして、大津落命の1ヶ月後、おそらく、大津の謀反に関する連座でしょう、
大伯は斎王の任を解かれ、大和に戻されます。
戻ったところで、最愛の弟はもうすでにこの世にはいませんでしたが、
このとき、亡き弟を詠んだ歌が、
万葉集の中でも、「絶唱」として有名なコレです。

「見まく欲り 我がする君も あらなくに なにしか来けむ 馬疲るるに」

「逢いたいと想う弟もいないのに、どうしてきてしまったのだろう」…という歌です。

また、大津の屍が二上山に移葬された時に詠んだ歌が、

「うつそみの 人なる我や 明日よりは 二上山を 弟と我が見む」

「生きている人である私は、
明日からは二上山を弟だと思って眺めることだろうか」……と、
幼い頃から2人で生きてきた弟を失った姉の悲しみが、
ひしひしと伝わってくるような歌です。

大伯のその後の消息ははっきりしていませんが、702年に41歳で亡くなったようです。
おそらく、生涯独身を貫き、弟の菩提を弔う人生だったと思われます。
実は、三重県の名張市というところに夏見廃寺跡という、
かなりの大きさの廃寺があるのですが、
この廃寺は、もともと昌福寺という天武天皇供養のための寺で、
大伯が建立したものと伝えられています。
しかし、私が思うに、おそらくは天武帝の供養とは表向きで、
実は大津の冥福を祈るために建てられたのだろうと思うのです。
しかも、その寺は持統天皇(鵜野皇后)や、
その子である草壁の妻・阿閇皇女(元明天皇)の援助を得て建てられており、
それが事実であるなら、持統一族の大津への贖罪とも思われ、
それは少しは供養になっただろうかと、私は、大伯・大津姉弟の心境を慮るのです。

[SE;KICHI]
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