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「今日の仕事は、楽しみですか。」

2021年の夏、覚えていらっしゃいますでしょうか。
JR品川駅のコンコースに並べられた、
「今日の仕事は、楽しみですか。」
というデジタルサイネージが、すさまじい批判を受けて炎上し、
たった1日で終了になりましたよね。

『今日の仕事は楽しみですか。』
https://www.kjclub.com/jp/board/exc_board_9/view/id/3402929

その批判とは、「仕事なんだから楽しいとか、楽しくないとか関係ねえだろ」とか、
「凹んでいるときに見たらメンタルをやられる」などというものでした。

当時、私は、この出来事では、3つのことでびっくりしました。

一つめは、純粋に、
「今日の仕事は、楽しみですか。」という質問は禁忌なのだという事実です。
私は、仕事とは誰かに求められて成立するものであり、
だとすれば、『仕事は、それ自体が喜び』だと教わってきたし、
自分でも心からそう思っているので、
「仕事なんだから楽しいとか、楽しくないとかではない」という視点は考えたこともなく、
こんなに大多数の人がこの文言に引っかかるというのは予想外でした。

しかし、よくよく考えてみれば“仕事”に対するスタンスが個々に違うのは当然で、
それは、平たく言えば、
その仕事をすること自体が目的であり喜びなのか、
あるいはあくまで生活手段なのか
という違いです。
生活のために致し方なく仕事をしているのだという人にとっては、
それが楽しいかどうかなど関係なく、収入が目的になるのでしょう。
これは、しっかり考えてみれば分かることではあったのですが、
私にはその概念がなかったため、
“仕事”に対するスタンスが個々に違うことは発見であり、驚きでした。

個人的には、稼ぐ手段としての労働、
すなわち、お金のために働くって、苦しくないか?と思うのです。
その稼いだお金を使って誰かの役に立ちたいという目的があるなら別ですが、
とりあえず、この先何があるか分からないからという、
いわば恐怖心に突き動かされて働くというのは、
なんたが楽しくなさそうだな、と。

このところ、投資大好きの岸田首相の影響か、
どうやったら儲かるかといった話ばかりする人が増えたように思うのです。
もちろん、お金は大事ではないというつもりはありませんが、
なんでもいいからお金が欲しい、収入が欲しいというのは、
なんというか、考えが貧しい感じがするのです。
現在放送中の『舞いあがれ!』でも、
父親から「おまえ、夢はないのか?」と尋ねられたヒロインの兄が、
「指一本で億のカネを動かせる男になる。あかんか?」と答えていましたが、
私は、お金を稼ぐことを目的にするよりは、
得たお金を何に使うか、ワクワクしたいものだと思うのです。

人物や事業に投資するにしろ、どこかの会社の株式を保有するにしろ、
リターンを期待するというより、
その事業や会社を応援する気持ちでお金を使っていただく、
そういう利他の心が大事なのかなと思うのです。

異論はあるかもしれませんが、
使途にワクワクしないのに、稼ぎ続けるというのは、
モチベーション維持が大変じゃないかな
と思うのです。

二つ目の驚きは、このデジタルサイネージが即座に引っ込められたことです。

コロナが流行り始めた頃、他県ナンバーの車が投石に遭うとか、
正義を標榜する荒くれ者が、はみ出し者に鉄槌を下す的な、
互いに攻撃性の強い社会になっていましたよね。
今回のデジタルサイネージにしろポスター等の広告にしろ然りで、
この程度の表現の刺激ぐらいで、
やれ傷ついたとか、やれ取り下げろとか、非難の嵐が起きるなんて信じられないし、
またその要求にすぐさま応じてしまう企業側の弱腰も、
私にしてみたら、信念はないのかと不思議に感じます。
結局、文句を言う市民とすぐに引っ込める企業と、
二人三脚で社会の息苦しさや閉塞感を加速させているように見えます。

広告についていちおう考えてみますと、
ありとあらゆる人にとって不快感のないコンテンツなど存在しませんよね。
自分にとって快適な表現でも、誰かにとっては不快かもしれないという意味で。
いくら配慮を重ねたところで、全員が了解する「満額回答」などはないでしょう。

そうすると、
たとえば「仕事がつらくて、自殺を考えるくらいに追い詰められている人」にしてみれば、
今回のデジタルサイネージに限らず、
キャリアを活かそうというような、転職事業会社の広告はすべて加害的に見えるだろうし、
気が狂いそうなほどの孤独感に苦しんでいる人からすれば、
マッチングアプリの広告なんか、憎悪の対象に思えるかもしれません。
それは、お金がない人が自動車や旅行の広告を見て軽蔑されている気分になったり、
酒に酔ったトラブルの経験のある人がアルコールの広告を見て落ち着かなくなったり、
そういうのと同じことです。

つまり、何かを表現する際に、誰かの被害意識にすべて配慮して、
誰のことも刺激しないようにしなければならないのであれば、
結局は何の表現も世に出すことはできなくなってしまうでしょう。

今回の騒動は、もちろん憲法上の「表現の自由」の問題などではありません。
しかし、市民が多少の不愉快さや感情的動揺を根拠にして、
「社会的に望ましくない」、「取り下げるべきだ」などと、
表現者に対して、撤回を要求したり、
企業側がそのようなヒステリックな声に弱腰に従ったりしてしまうことは、
個人の精神的な脆弱性や、企業の性急な思慮の浅さに繋がっている気がするのです。

結局、SNSで吐露した自分ひとりのちょっとした不快感が、
何かのきっかけで多くの人びとの共感を得てしまった場合、
それはもはや個人的な問題ではなくて社会的な旋風となり、
場合によっては政治的な問題にすら発展してしまうという話です。
そのことで社会が良くなることももちろんあるでしょうが、
誰かを完膚なきまでに叩き潰すこともあり得るでしょう。

これは旧来の社会には存在しえなかった驚異的な権力と言えます。
人間社会に「法秩序」のルールを築いた近代の人びとは、
現代社会にSNSという力が誕生することを予想できてなどいなかったわけで、
これが、誰かの息の根を止めるほどに大きな影響力を持つようになり、
社会を揺るがすようになるとは思っていなかったでしょう。
それくらい、駅にほんの一瞬だけ表示される、
「今日の仕事は、楽しみですか。」程度の広告表現を、
寄って集って叩き潰すような真似は、想定外なことだったはずです。

と、ここまで考えて三つ目の気づき。
企業側もバカじゃないんだから、こうなることは予想の範囲内だったのかも。
だとすれば、巧妙な炎上商法ってことですかね。

[SE;KICHI]
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