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続・ポージングの話

多様性などということを言い出してからずいぶん経ちました。
2015年9月の国連サミットで SDGs が採択されたせいか、
ここ数年、サスティナブルということがやかましく言われていて、
特に日本の企業などでは [4] とか [8] に力を入れているところが多いようで、
その発露として『多様性』に注目が集まっているという形ででしょうか。

もちろん、当社も、若者や障害者を含む全ての男性および女性における、
積極的な雇用や働きがいのある人間らしい仕事を守るという立場には、
全面的に賛成するものです。
しかし、日本の社会でそれが共通認識として語られながらも、
一方で、果たして本当にそこに向かって推進されているのか、
もしかしたら「題目倒れ」になっていたりはしないかと心配にもなるのです。

正月に、近県の温泉に行きました。
そこは混浴になっていたのですが、
令和の時代に、さすがに男女が性器まる出しというわけにはいかないのでしょう、
受付で“湯浴み着”を渡され、それを身に着けて入浴することになっていました。
つまり、男性は湯文字のようなものを腰に巻き、
女性は長襦袢のようなものを羽織って入浴するシステムというわけです。

入浴中は、いつになく初対面の方とも話が弾みます。
なにしろ、男女の性器は“湯浴み着”で隠されており、
いたずらに裸を意識しなくて済むようになっているわけですから。
私も、山梨から来たという、とある母娘と仲良くなって、
山梨銘菓の桔梗屋・信玄餅の話など、時間を忘れて話し込んだのでした。
母は原田知世に似た、柔らかでふんわりした雰囲気の50代、
娘は池田エライザふうの、ダルそうな表情が印象的な20代です。

いや、実際にはそこは温泉ですから、時間を忘れたりはしません。
話しながら、身体が熱くなったら湯船から出て縁に腰掛け、
冷えてきたらそのまま湯船に身を沈めながら話すといった感じで、
まぁ、誰もがする感じで、のぼせない程度に体温調節をしながら話していたわけです。
もちろん、相手の母娘も同じように、湯船に出たり入ったりしています。

ところで、受付で受け取った“湯浴み着”はなかなかの薄手で、
裸を意識しなくて済むようになっているはずの“湯浴み着”なのに、
お湯につかって濡れた状態で湯船から出ると、
むしろ裸を強調するかのように透けているのでした。
その母娘もバッチリ透けており、
湯船から出たり入ったりするたびに、透けて見えるわけです。
和彫りが。しかも2人揃って。
いや、もちろん、胸とかそういう部分も透けて見えているのですが、
そういうところよりも、肩や腕の、鮮やかな和彫りが目に飛び込んできます。
あまりにも私がガン見していたせいでしょう、母のほうが、
「あ、コレ、気になりますか。……よかったら見ます?」と、
わざわざ背中を向いてくれました。

濡れてぺったり張り付いた長襦袢越しの背中には、見事な和彫り。
母は菩薩像、娘は鯉の滝登りのような意匠になっていて、
もちろん単体ではなく、彼岸花やらなにやらを散らしてある凝ったもの。
「コレ、観音様じゃなく虚空蔵菩薩なんですよ」と、
上品に笑う、和彫りには縁がなさそうに見える原田知世似の母。
ダルそうな池田エライザふうの娘も、「カッコいいっしょ?」と言います。
母によれば、「これのせいで銭湯にもプールにも行けないんです」とのことですが、
聞けば、この温泉は“湯浴み着”を着るシステムのため、
いちおう見えないことにできるということで、時折訪れているとのこと。

しかし、また、それは、なんとも美しい和彫りでした。
母の背中に鎮座する虚空蔵菩薩は精妙で、手を合わせたくなるような出来だし、
華奢な娘の背中に描かれた鯉は丸々と太っていて生命力にあふれています。
なんというか、ついつい見入ってしまう、見事な刺青だったのです。

そこで私に湧き上がってきたのは、
なぜ、それのせいで銭湯にもプールにも行けないんだろうという疑問。
もちろん、それが銭湯やプールのルールだということは承知していますが、
なぜ、そういうルールがあるのでしょうか。
いや、たとえば伝染病とか極端に不潔とか、
お湯を汚すような方が入店されると困るだろうなとは思いますが、
刺青は、別に誰にも実害は与えないと思うのに、なぜダメなのでしょうか。

実は、銭湯は「公衆浴場」とも言われ、保健衛生上必要とされる施設だとされているため、基本的にはタトゥーが入っていても入場することが可能です。全国浴場組合によれば「刺青のある方もお断りしていない」とのこと。それ以外の施設(スーパー銭湯やプール等)では入場が断られていることがい多いのですが、上記の母娘はこれを混同したものでしょう。

後日、気になって調べてみたところ、
刺青の方が銭湯やプールで入店が制限されている理由は、
衛生面での懸念などではなく、怖い感じがするから、だそう。
いやいや、何年も前には北海道の温浴施設で、
マオリ族の女性がタトゥーを理由に入浴を拒否される問題も起きましたが、
マオリ族の女性が怖いはずはないので、
結局、「刺青イコール反社会勢力」というイメージの紐づけの問題ですよね。

多様性、認められていないじゃないか。

刺青が入っているだけで反社会勢力と決めつけて排除するというのは、
冒頭の多様性を認める社会という観点からすれば、明らかに逆行しています。
これって、一見、なんだか日本人的な気もするのですが、
いや、しかし、昭和の昔には刺青のある人も普通に銭湯にいましたし、
それこそ反社会的な生活をなさっている方もいたと思います。
そんなときは、むしろ一般の入浴客のほうが品行方正で、
トラブルは起きないばかりか、みんなルールを守っていたと記憶しています。

私が出会った和彫りの母娘は、本当に素敵な母娘だったのです。
どういう経緯で背中に和彫りを背負っているのかは知りませんが、
反社会的で怖い人というイメージは、話してみればすぐに吹き飛びます。
多様性って、個性を見ずにイメージで語れということではないはずですから、
SDGs とかサスティナブルとか、カッコいいこと言っていますが、
結局はベンダサン的な空気に流される日本。
多様性なんて受け入れる気はないってことですかね。

ポーズだけじゃなくて、
多様性を標榜するなら、
どんな人も受け入れるだけの度量がいるのだろう
と、
改めて思ったのでした。

[SE;KICHI]
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