fc2ブログ

『後生鰻』からの学び

先週は21日が土用の丑の日だったので、鰻を召し上がった方も多かったことでしょう。
今年は土用の期間中に丑の日が2回来る暦の巡りなので、
今週末の8月2日は「土用二の丑」ですから、まだの方はどうぞ。

鰻といえば、『後生鰻』というお話をご存じでしょうか。

とあるご隠居、大の殺生嫌いで、
蚊が腕に止まっても叩かず、血を吸われっぱなしにするほど。
日課にしている浅草観音へ参った後、たまたま川沿いの鰻屋の前を通りかかると、
親方がまな板の上に鰻を乗せ、キリで刺そうとしています。
これを見たご隠居、殺生だからそんなことをするなと言うけれど、
当然、親方は商売で蒲焼にするのだから仕方ないと言いますわね。
それならとご隠居、2円出して鰻を買い取って、前の川に持っていき、
「これからはもう人間につかまるんじゃないぞ」とボチャーンと投げ込み、
「ああ、いいことをした」。

それからというもの、連日ご隠居が来ては2円で鰻を買い、
川へ投げ込んで去っていきます。
2円というと、今の8,000円くらいなので、おかげで鰻屋は大儲けで、
ほかの鰻屋仲間にもうらやましがられるほど。

ところが、そのうちぷっつりとご隠居が来なくなります。
鰻屋は金づるが来なくなったのを惜しがっていましたが、
何日かしたある日、久々にご隠居があっちから歩いてきます。
しかし、鰻屋、たまたまその日は河岸に行かず鰻を仕入れていませんでした。
せっかくの金づるを素通りさせたくない鰻屋、
ドジョウでも金魚でも、何かまな板に乗せるものはないかと探したけれど何もない。
親方、もう仕方がないと、自分の女房をまな板に乗せキリを振り上げます。

これを見て驚いた隠居、その女房を100円で買い取って、
前の川へボチャーン。
これには親方が「ああ、いいことをした」。


この話、私は示唆に富んだ話だなぁと思うのです。
だって、ご隠居の殺生嫌いは、たぶん正しいことなのです。
しかし、いくら正しいことでも、それが極端に走ると誰も幸せにしないという、
原理主義の鋭さや怖さを感じます。

さて、ちょっと口幅ったいのですが、
いま、Go To キャンペーンをやっているでしょう。
旅行代金のうち最大16,000円を政府が出してくれるというものです。
いや、その助成費用は税金なのですから、
結局は自分で払っているのと同じことなんですが、
それって、どうなんでしょうか。

東日本大震災が起こった時、みなさん、被災地のために募金しましたよね。
募金するお金がない人は、毛布や衣類など、手持ちの物資を送ったでしょう。
それもない人は、時間を割いてボランティアに入り、労働力を寄付したでしょう。
そういう時間すらない人は、仕方がないから心の中で応援したはずです。
つまり、あのとき、私たち日本人は、
困っている人たちのために何かを提供したはずなんですよ。

いまは、旅館などの観光業が困っているという場面です。
その業種の方を助けようとするとき、なぜ、政府の補助がいるんでしょうか。
旅館が大変なんだったら、
みんなで旅館、行けばいいじゃないですか。
別に政府に出してもらわなくても、
自分たちが楽しみたいというより、旅館を助けたいという趣旨なんだから、
見返りなんてなくても、自腹を切れるじゃないですか。

今回、感染再拡大の影響を受けて、
Go To キャンペーンの対象から東京が除外されましたが、
「じゃあ、行かない」って、キャンセルした人も多いと聞きます。
私は、え? どうして?って思いました。
いや、感染を拡大させないためという理由なら分かるのですが、
国からの補助が出ないなら行かないって言うのなら、
ちょっと現金すぎませんかね。

これって、ふるさと納税における返礼品の話と似ています。
本来の趣旨は、思い入れのある自治体に対する「寄付」ですよね。
それが、返礼品合戦で、豪華な返礼品欲しさに、
縁もゆかりもない自治体に送金する「注文」になってしまっています。

それって、縁もゆかりもない自治体に送金する納税者が強欲なのかというと、
まぁ、私も含め、そういう面もないとは言えないと思うのです。
それでは、そういう射幸心をあおる設定にしている自治体が悪いかというと、
まぁ、それも、そういう面もないとは言えないと思うのです。
ただ、私は、そういうことよりも、
どうせみんな、そんなリターンがないと寄付しないでしょ?
困っている自治体のためにお金なんて出さないでしょ?
という制度のしつらえになっていることにムッとします。
国民は、政府から甘く見られているわけです。

今回の Go To キャンペーンも然りです。
本当は、人助けだと思っていれば、
前述のとおり、政府からの補助なんてなくても、やれるはずです。
観光地のために、自分が今まで訪れて素敵だったスポットに、
もう一度行ってみるだけでいいんですから、そう難しいことではありません。
したがって、補助がないと旅行に行かない人々が強欲なのかというと、
もちろん、そういう面もあると言わざるを得ませんが、
しかし、今回のキャンペーンは、
「アンタら、カネ出してやらねーと旅行とか、行かんやろ?」って、
バカにされて、2万円を投げて寄越されている感じです。

つまり、国民は、
政府から強欲だと思われているということです。

なめられたものです。


東日本大震災の時の募金の集まり方を見れば、私は、
日本人は、ちゃんと困っている人のためにお金を使えると思うんですよ。
私は、日本人を、
たった2万円の現金をパンツにねじ込まれないと動けないような、
そんな下品な国民ではないと信じています。

『後生鰻』に出てくるご隠居の殺生嫌いがたぶん正しいことであるように、
いま、観光地を支援することも、たぶん正しいことでしょう。
しかし、いくら正しいことでも、それが極端に走ると誰も幸せにしないのです。
2万円の現金をパンツにねじ込んで国民を動かそうとする魂胆が気に食いません。
国が性悪説で国民を見ていることや、
国民をコントロールできると踏んでいることが感じられ、
少し暗澹たる気持ちになります。

やはり、観光業の救済は、国民の自発的な「支援の気持ち」が大事だと思うのですが。

[SE;KICHI]
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

なるほど!
なんか釈然としねぇって思ってたんすけど、
踊らされてるんだって、納得しました。
社会派ブログっすね!

No title

大学の先生から、社会派なブログがあるから読んでみなさいと言われて読んでいます。
国がしてくれる補助金が、税金から成り立っているって、考えたこともなかったので、勉強になりました。
プロフィール

kkseishin

Author:kkseishin
株式会社セイシン
私たちは工場設備機器を中心に、お客様にご提案・販売をしている総合商社です。

■富山本社/〒930-0821
富山県富山市飯野16番地の5
TEL:(076)451-0541
FAX:(076)451-0543

■新潟営業所/
〒950-1142
新潟県新潟市江南区楚川甲619番地6号
TEL:(025)283-5311
FAX:(025)283-7469



URL:http://www.kk-seishin.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR