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『料理歳時記』

『料理歳時記』という本を知っていますか。

『料理歳時記』

これは2000年代に入ったからの文庫版ですが、
初版は1973年と言いますから、もう40年以上も前の本になります。
著者の辰巳浜子さんは、明治生まれの主婦。
もうずいぶん前に他界され、料理研究家としては草分けのような方だと思うのですが、
本人は料理研究家と呼ばれることを嫌って、自らを主婦であると自称していました。

なにしろ主婦ですので、
いまどきの料理研究家のようにバンバン料理本を出すことはなく、
生涯で出版した著書は5冊だけ。
それも、写真付きのカラーのレシピ本ではありません。
この『料理歳時記』も文字だけが書かれている本で、
いまでいうところの食をテーマにしたエッセイですが、
日々のエピソードの中にレシピが文章で紹介されています。

ご主人は大成建設の役員さんで、
ときに、急に部下を連れて帰宅することがあったようです。
こんなとき、サザエさんなら怒ったり文句を言ったりしそうなものですが、
著者は、夫が連れてきた部下に酒や肴を出したりすることに対して、
義務とは感じず、楽しむという感覚を持っていた人だったようで、
たとえば、出した肴で酒が進んでいるのを陰から見て喜んだりしています。

私が気に入っている“鮭”の項を紹介しましょう。
私の生家は鮭にやかましい家でした。
父が新潟県北蒲原郡の出身なので、
子供の頃食べつけた鮭は今から思うと素晴らしく美味しいものでした。
(中略)
季節になると、幅の広い分厚い鮭の胴の部分だけを丸のままに、
酒粕に漬け込んだものが送られてきました。
七、八センチ幅のぶつ切りにします。
火をたっぷり真赤におこして薄く灰をかけ、
そして少し遠く離して上から日本紙をかぶせてこんがりと焼きあげたものです。

……どうでしょうか。
いまの私たちにとって普通の調理法ではないと思いますが、
きっと七輪のようなところで火にあぶって焼いているのでしょう、
光景としては思い浮かぶ感じがしますよね。

焼きたてのほやほやの真中に箸を入れると、
牡丹の花びらのような淡桃色の身がポックリポックリと一枚一枚はがれて、
焼きたての鮭の香りとほのかな酒粕の香りがただよって、
思わずつばを飲みこんだものです。

……お腹、減ってきませんか。
焼き鮭、食べたくなりませんでしたか

この“鮭”の項は、このあと、頭の軟骨は氷頭なますに、
中骨と尻尾は三平汁や昆布巻にと、調理法が紹介されています。
私は、20年ほど前ですが、
この本で氷頭なますを知り、書かれたように作ってみた記憶があります。
まず頭を真二つに切り、
軟骨の部分だけを切り取ってごくごく薄く切り、水でよく洗います。
最初はにごった脂ぎった水になりますが、
三、四度も水を取り替えますととてもきれいになります。
(中略)
水をきって、一度酢洗いして、新しく酢に漬け直します。
その時、針生姜とゆずまたはレモンの表皮を薄切りにして、
いっしょに漬け込みます。

……なんとなく、イラストもないこの文章だけで作るのは大変そうに感じますが、
実際には、そう難しいことは書いていないし、
なにより情景が思い浮かぶので、これで作れたのは古い思い出です。

氷頭を取ったあとの頭のあらは塩出しして粕汁、のっぺい汁、
大根との炊き合わせに使ったり、昆布巻の芯に使うと非常に美味しく、
骨までもやわらかく食べられます。

……あぁ、昆布巻の芯…おいしそうですねぇ。

40年以上たっていても季節感は変わらないので、
旬の食べ物がおいしいということが伝わってきて、古くありませんよね。
エッセイというのは誰でも書けるように錯覚しがちですが、
私は、この辰巳浜子という主婦が書いたエッセイ、巧いと思います。

[SE;KICHI]
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