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魅惑の・・・(10)

今回は、2012年3月に投稿した観音菩薩の話の続きです。

この観音菩薩という仏さまの最大の特徴は、変身ができること。
それってくだらない能力のようにも見えますが、
ママに怒られても言うことを聞かない子供がパパに怒られるとシュンとするように、
相手が変わると素直に従えることもあるというもの。
そういう方便のために、求められればどんな姿にもなって人々を救おうと決意し、
変身できるようになったのが観音菩薩なのです。
少し前に紹介した如意輪観音も、その変身パターンのひとつですし、
ほかに、千手観音や十一面観音なども知られています。

で、今回は十一面観音のお話です。
十一面観音は、苦しんでいる人をすぐに見つけるために頭の上に11の顔があり、
全方向を見守っているとされています。
また、それぞれの顔は、人々をなだめたり怒ったり、励ましたり、
それぞれに別の役目をするのだと説かれています。

十一面観音は、顔は多いものの腕がたくさんあったりはせず、
首から下は、私たち普通の人間と同じようなビジュアルになっています。
そのため、肉体に違和感を感じさせることなく造形美を追求しやすいようで、
仏像としては奈良時代の昔から人気があって、多くの作例が遺されています。
十一面観音で国宝に指定されているのは7躯ですが、
そのうち、よく筆頭に挙げられるのが、渡岸寺の十一面観音立像。

渡岸寺 十一面観音立像http://www.kokokujitanbo.com/takatuki-14-2.htm

像高は195cmで、ほぼ等身大ですが、上部20cmほどは十一面が占めています。
パースから見て、11の面のひとつひとつは握りこぶし大といったところでしょう。
想像するになかなか重そうで、肩こりが心配になります。
しかし、肩こりを感じさせない鼻筋の通った精悍な顔立ちに柔らかなプロポーション。
特に腰のくねりからは、実に妖艶な雰囲気が漂っています。
……どうでしょうか、往年の河内桃子とか、そういう感じです。

さて、十一面観音の頭上の正面には、
まず、阿弥陀如来のミニチュアのような「化仏(けぶつ)」がついています。
これはこの観音が阿弥陀如来の化身だということを示しています。
観音菩薩というのは阿弥陀如来ファミリーの一員なので、この化仏はデフォルトです。
そして、それ以外に、十一面観音の頭の上の顔には5種類の表情があります。
頭頂に1つだけあるのが「仏頂面(ぶっちょうめん)」。
仏頂面(ぶっちょうづら)という表情がありますが、実はそれは悟りの表情ということで、
何が起きても動じなさそうな無表情になっています。
次に、本面のちょうど額の部分にあたる前3面が「菩薩面(ぼさつめん)」。
まぁ、いわば、正攻法での穏やかな導きを担当している優しいお顔で、
“観音といえば”というような表情として正面に配置されるのも納得です。
続いて、左のこめかみあたりについている3面は「瞋怒面(しんぬめん)」。
世の中、優しく諭してもヘラヘラして言うことを聞かぬ者というのはいるものです。
そういうバカ者を「ゴルァ」と戒める、怒った顔をしています。
そして、右側の3面が「狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)」。
“牙”ってなんか怖っ!と感じますが、牙って、爽やかな白い歯のこと。
頑張っている人に白い歯をチラリと見せる、微笑みの表情。
そして背後の1面を「暴悪大笑面(ぼうまくたいしょうめん)」といい、全部合わせて11面です。

ところで、この背後の1面、暴悪大笑面。
煩悩だらけの人の悪行や屁理屈を笑い飛ばす表情とされていますが、
字面からしても、“悪を暴いて大笑い”……ということで、
なんでしょうか、すべてお見通しの水戸黄門みたいな感じでしょうか。
いずれにせよ、愚かすぎる人間を笑っちゃっている表情と言われています。

ところが、この暴悪大笑面、なかなか見ることのできないものなのです。
そりゃそうですよね。
だいたい仏像は正面から鑑賞するようになっているものですから、
多くの寺院で、観音像の背後には回り込めない構造になっていて、
暴悪大笑面も見られないことが普通です。
また、見えても暗い堂内では表情がよくわからなかったりするもの。

しかし、こちらの渡岸寺は違います。
後頭部の暴悪大笑面が鑑賞できるよう、観音様の背後に通路があるうえ、
わざわざ大笑面にスポットライトまで当ててくださる暴悪大笑面推しなのです。
その顔がこちら。

暴悪大笑面http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/butuzou2.htm

いかがでしょうか。
ちょっと……その……下品、じゃないですか?
前述の通り、これは、人の煩悩を笑い飛ばす表情とされていますが、
実際に誰かからこの顔で笑われたらムッとしてしまいそうな表情です。
何というか、朗らかでないというか、夢に出てきたら寝苦しそうな、
ちょっと、観音としての活動に支障はないのか心配になるような顔立ちです。
もしかして、この顔の不快さに、悪人たちも思わず改心してしまうのか?と、
あまりの表情にいらぬ邪推をしてしまうくらい。

ところで、私が不思議だなと思うのは、
なぜ、このようなものを考え出したのかということ。
だって、仏像がいまよりももっと人々の尊敬を集めていた時代、
仏像の背後に回って後頭部を見るなんて、そもそも罰当たりなことでしたから、
この暴悪大笑面を作ったところで、ほぼ人目に触れることがないはずです。
そんな、ほとんど人が見ない場所にバカ笑いする顔を彫る意味の分からなさ。

私のたどり着いた答えは、これは内心を表しているのだなということ。
正面から見たら菩薩面など穏やかな顔立ちをされている観音さまですが、
裏に回ってみれば、人々のしょうもなさにバカ笑いしちゃっている状態。
見られてないと思って……ということでもないでしょうが、
たぶん、見られることは想定していない素の表情、つまり本心です。
つまり、観音さまの本心は、
「見えてるところでは澄ましてるけどね、
ホンマは、みんなのしょうもなさに笑ろてしもてんねん」

ということなのでしょう。
なんか、そういう表情をさせてしまい、申し訳ないことです。

よく、悪を滅するには笑うが一番といいますが、
しかし、それにしては、気味の悪い表情です。
個人的には、瞋怒面で「ゴルァ」と凄まれるより、
こういう気味の悪い表情で嘲笑されるほうが、じわじわとダメージがあります。
こういう人があっちから近づいてきたら、怒ってる人の何倍も怖いですしね。

その他の国宝・十一面観音像について、ご紹介しておきます。

聖林寺(奈良)観音寺(京都)六波羅蜜寺(京都)道明寺(大阪)法華寺(奈良)室生寺(奈良) 造像年順

あと、国宝ではありませんが、背後から暴悪大笑面を見ることのできる十一面観音としては、斑鳩の法輪寺(奈良)があります。

一生に一度くらいは
見ておいて損はないと思いますよ。


[SE;KICHI]
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