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道祖神

朝5時20分、私は出勤のためにクルマで家を出ます。
家を出て5分後くらいに、お地蔵さんが祀られている祠の前を通るのですが、
その時間、毎日、その祠の前で手を合わせているお婆ちゃんを見かけます。
小さくて背中の丸いお婆ちゃんなのですが、
清々しいほどに一心に祈りを捧げている感じで、
毎朝、私はそこを通るたびに気になっていました。
ある日、どうしても気になった私はクルマを停め、お婆ちゃんに声をかけました。
不躾ながら、「何を祈ってらっしゃるんですか」って。
聞けば、このお婆ちゃん、
先に亡くなった夫の追善のためとか、早世した子供の供養のためとか、
そういう個人的な救済を求めてではなく、
その地域の安寧のために祈っているといいます。

原点を思い知らされる思いです。
そもそも、どうして、こんな路傍にお地蔵さんが安置されているかって、
その道を通る者を見守り、禍々しい存在から集落を守るため。
したがって、お婆ちゃんの「地域の安寧」という祈りの理由は、正しいのです。

地域の安寧を願う存在といえば「道祖神」です。
集落の入り口などに置かれている石仏で、沖縄の石敢當みたいなもので、
禍々しい存在が侵入しないよう、集落を護る役割を与えられています。
ビジュアルは一定ではありませんが、
“双体道祖神”と言って、男女一対で彫られていることが多いです。

道祖神(矢下)

これは私が住んでいた村の、矢下という集落の道祖神です。
注目してほしいのは祀られ方。
この写真の道祖神は、舗装された道の脇に置かれ、
屋根を掛けてもらって、木製の玉垣で囲われています。
おそらく、道路を整備した際、どこかから運ばれてきてこの場所に安置され、
こうして丁寧に祀られたのだと思われます。
私から見て、これはかなり大事に祀られた、幸せな道祖神に見えます。

道祖神(切久保)

これは切久保という集落の道祖神です。
農道の脇に置かれた祠の中に安置されていますが、
玉垣はなく、吹きさらしで、矢下よりも過酷な環境であることがうかがわれます。
その証拠に矢下の道祖神よりも風化が進んでいるように見えますが、
注連縄は貼ってあるので、大事にはされているようです。

矢下は新道が整備された際に他所から運ばれてきて、
きちんと祈ってもらえるように覆い屋が懸けられています。
切久保は、それよりも時期的には古いものの、
農道の脇に、いちおう屋根を懸けてもらえました。
では、そこまで手厚く祀られていない道祖神って、どんなのでしょうか。

道祖神(石畳) 道祖神(石畳-拡大)

中央の大木の根元に、何か立てかけてあるのが見えますか。
これは石畳という集落の道祖神です。
車が通れる道から何メートルか奥まったところに置かれています。
車が通れる道といっても、対向車とすれ違えるスペースはないため、
この場所に車を停めて道祖神に祈りを捧げることはできません。
つまり、日常的に祈ってもらえる道祖神ではないわけです。
傾いちゃってるし。

つまり、仏像にしても何にしても、
日常的に祈ってもらえることは幸せだということです。

そうそう。
最近、『ポツンと一軒家』という番組が人気のようですね。
山中の一軒家にスポットを当て、そこの住人に注目する番組で、
その場所の険しさを強調するために、映像では道中の林道などが映るのですが、
私にしてみれば、別に険しくもなんともない光景に見えて、少し呆れます。
だって、私が住んでいた場所からの眺望はこんな感じ(写真左)
そして、そこから小学校までの4kmの通学路は、ずっと未舗装なわけでもないですが、
だいたいこんな感じ(写真中)で、
特に学校近くの100mほどはこんな感じ(写真右)です。

眺望 通学路 通学路(学校上)

これは令和に入ってから行って撮った写真なので、
私が実際に通学していた昭和の頃は、もっと未整備だったかもしれません。

そして、こういう旧道というか林道の場合、道祖神というのはこういう場所にあります。

道祖神(小松尾)

これは、小松尾という集落の道祖神のロケーションです。
何段か上った台地に覆い屋があるのが見えますでしょうか。
もはや道端ではないので、意思がないと拝みにはいかないでしょう。
いま、この小松尾集落には3世帯ほどしか住んでいませんので、
この道祖神は、いずれ、長い年月を経て、やがて土に戻ることになります。

うまく伝わっていますでしょうか。
仏像にしても何にしても、少子高齢化などにより集落が放棄されると、
そのまま山中に取り残されることになります。
矢下や切久保みたいに、
運よく誰かが舗装道路の脇に移設してくれれば祈りは続きますが、
多くの場合、そのまま山中に放棄されます。
この村だけでも、もう道が消滅した場所に取り残されている道祖神があります。
これは、30年ほど前に私が監修した村のパンフレットですが、
当時、調査して存在を確認できた道祖神でも、30年が経って、
おそらく、1/3の道祖神は、もう所在が確認できなくなっていると思われます。

『八坂村の道祖神』

かつては集落の入り口で門番のように立ち、
集落を禍々しい存在から護ってきた道祖神ですが、
誰もいなくなった山中で、この先、おそらく誰からも祈られることはなく、
その役目を失って、傾き、風化しながら、何を思うのでしょうか。

繰り返しますが、
朝5時25分に、お地蔵さんに地域の安寧を一心に祈る老婆を見て、
日常的に祈ってもらえることは幸せだと改めて感じます。
そして、私も、その老婆の願いが叶えばいいと思いますし、
そのお地蔵さんがその拠り所になればいいと心から思います。

[SE;KICHI]
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5時台に出勤って、都会に住んでる私たちだけかと思ってましたけど、富山?の田舎(失礼!)でもそうなんですか。田舎に移住すれば時間に余裕ができるか?と思ってましたが、どこでも一緒なんですね。(すいません関係ない話で 汗)
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