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渋温泉のホスピタリティ

古くからの温泉地というのは、そこはかとない虚しさを内包しているもの。
それはなぜかというと、旅行というものが持つ一般的な性質として、
『るるぶ』とか眺めながら妄想している、出発前の段階が最高潮に楽しいため。
実際に現地に到着してみると、思ったほどの楽しさがなかったりなんかして、
現実が期待を超えられないケースが多いものです。
だからこそ、以前、温泉旅館に泊まって感動したという話をしましたが、
実際に行ってみて評価が下がらないということは、
なかなか稀有なことだといえます。

具体的にどこの温泉地が……という話ではありませんが、
古くからの温泉地というのは、温泉という資源に恵まれていたため、
往々にして、提供側都合でコンテンツ設計されている、ような気がします。
ウチには素敵な温泉があるんだ、あとのことは大目に見ろ、的な。

外から眺めると不安なほどに増築に増築を重ねた違法建築の館のような旅館で、
大浴場が異様に遠いとか、その大浴場にリンスインシャンプーしか置いてないとか。
特に差がはっきり出るのが食事で、
一瞥して手を掛けていないことが丸わかりだったり、
安い旅館だと、刺身や天婦羅が最初からセットされている場合もありますし、
ひどいところになると、旅館の前に業務用食材の業者トラックが停まっていたり、
冷凍食品を搬入しているところに出くわしたりします。
これらの、コスパを追求する姿勢というのは、企業体として大事だとは思いますが、
お客様にしてみれば「そっち(旅館側)の都合」なので、感づかせないでほしいもの。

そもそも、個々の旅館のみならず、
温泉街全体で雰囲気を盛り上げる気持ちがないケースすらあります。
せっかくの温泉街なのに、勝手に休んでシャッター降ろしている土産屋とか、
宿泊客以外が店先で立ち止まると露骨に嫌がる旅館とか。
温泉街一丸となって、訪れた人に好印象を残してもらおうという団結力がなく、
閉店した店も多い、寂れたとはまた別の、冗長で閑散とした温泉街。

もっと、宿泊客が喜ぶような施策を考えられないもんかねぇと思うのですが、
ここは昔から、これでやってからよぉと言わんばかりの、
前時代的な、提供側の固定観念を強く押し出した温泉街は、
なんだか灰色っぽい淫靡なイメージで、
不倫旅行などにはむしろ向いているかもしれませんが、
明るく朗らかな家族旅行などに適してはいません。

そこへ行くと、以前紹介した渋温泉は、温泉街ごと、感心だなぁと思うのです。

まず、渋温泉は外湯めぐりが有名です。

そぞろ歩きの小路 渋大湯 綿の湯

まぁ、正直、バカじゃないかと思うような温度の浴槽なので、
なかなか9湯ある外湯をすべて巡ろうという気にはならないのですが、
野沢温泉などと違って、9湯はそれぞれ源泉が異なるのだと聞けば、
少し、巡ってみようかという気にもさせてくれるもの。
それ以上に巧妙だと思ったのは、土産屋で特別な手ぬぐい(350円)を購入し、
それに、各外湯を巡るとスタンプが押せるというスタンプラリーのような遊びで、
スタンプを揃えて寺に手拭いを持って行くと、寺のハンコがもらえてコンプリート。

外湯めぐり

というわけで、気がついたら乗せられて9湯を巡っているという仕掛けですが、
これだって、特別な手ぬぐいを売る土産屋や、
各外湯の浴槽やスタンプを管理する管理者の存在、
それから、最後に、ハンコを求めて石段を上がってくる汗だくの入浴者を、
快く受け入れる地元の寺の協力など、地域ぐるみでないと成立しません。
さらに、私が、渋温泉は徹底しているなと思っているのは、
各外湯の入り口の施錠管理です。
外湯のカギは、温泉街に投宿している宿泊客に各宿泊先から渡されるシステムで、
つまり、日帰りの客は、各外湯の入り口のカギをもらえないことになっており、
外からの客に必要以上に荒らされないという寸法です。
これは考えたなぁ、と思います。

ところで、私たちが止宿した時季には、温泉街で「夜祭り」というのをやっていました。
といっても、
仮面ライダーショーをやったり、ゆるキャラが練り歩いているような祭りではなく、
単に、各旅館やら店舗やらが、自分の店の軒先に床几やら縁台などを並べるだけ。
店主は、自分の店の軒先に腰を下ろした客を饗応するという仕組みで、
まぁ、はっきり言ってたいした企画ではないんですが、
これが実に心地よいのです。

何がって、温泉街に、ウチは関係ないからっていう、
非協力的な店舗が1軒もないから。
旅館の前の縁台に腰を下ろせば、抹茶と和菓子が振る舞われ、
お土産屋の前の床几に座れば温泉まんじゅうを供してくださり、
そば屋さんの前を通りかかればかき氷をいただけるのです。
何もない民家の前には、、、大きな将棋盤があったり、
コマ回しをするスペースがあったり、メンコ遊びのスペースがあったり。
なかには、手作りのピンボール台を置いている家もありました。
とにかく、ウチは関係ないからっていう店舗はなく、
全員参加で、訪問客を喜ばせたいという気持ちが伝わってきます。

夜の小路 コマ回し 射的場

冒頭にも書きましたが、
旅行というものは、妄想によって期待のピークを手前に設定しすぎているので、
宿命的に、現実が期待を超えられず、
現地の押しつけがましいサービスに辟易として帰ってくることもしばしばです。
それが、この渋温泉の“街おこし”と言ってもよい取り組みを見ると、
実に簡単なことでも訪問客は満足するのだということが分かります。
渋温泉は、そう高名な温泉街でもなく、カジノもストリップもありません。
つまり、ハード面では必ずしも恵まれてはいないのですが、
訪問客に対する少しのホスピタリティさえあれば
ただべニアの台にコマを並べて置いておくだけで、
大の大人がついついそれに興じてしまい、満足して帰るわけです。

ディズニーに倣うまでもなく、満足によるリピーター化が、
顧客創出の王道です。
これはうまくやったなぁ、と思います。

[SE;KICHI]
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