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流行りに乗ったとかじゃなくて、昔から好きだったんだってば。

PayPay とか AmazonPay とかの利用が急拡大していて、
最近では、現金決済できない場所も出てきましたね。
経済産業省はキャッシュレス決済を推進していて、
2025年までに40~50%の決裁をキャッシュレスにする目標を打ち出しています。
もはや、キャッシュレス決済は世界の潮流といえるわけですが、
そんなときに飛び込んできたのが、5年後に新紙幣を発行する話。
このキャッシュレスの時代に新紙幣発行って、なんだか不思議な政策です。

それはそうと、新10000円札の肖像画は渋沢栄一に決まったそうです。
このブログでも、以前、ちょっとだけ名前が出たことがありますが、
近代日本経済の父・渋沢栄一は、紙幣の肖像にぴったりのような気がします。
しかし、世の中の渋沢栄一の知名度の低さときたらどうでしょうか。
失礼ながら、農業や漁業などの一次産業に携わる方に聞いたのならともかく、
経済の中枢といってもいい新橋駅前でビジネスマンに聞いたにもかかわらず、
渋沢栄一の知名度はほとんど皆無で、私は本当に驚きました。
ちなみに、弊社の Okei さんに「渋沢栄一って知ってる」と尋ねたところ、
「え? 私物は禁止? 何ですか、それ?」と言っていました。
うふふ、Okei さんの期待を裏切らない回答には恐れ入ります。

さて、決まったといえば、4月に発表された新元号「令和」です。
「令和」は、その出典が万葉集だったということで、
にわかに万葉集ブームが巻き起こりました。
20年ほど前から万葉集に興味を持って学んでいる私としても、
万葉集ブームが起こる日が来るとは思ってもいなかったので、嬉しいことです。

しかし、地味ながらも確実に起きているこのブーム、弊害もあるようで、
4月以降、富山が万葉集の故地であると聞きつけた“にわか万葉集ファン”が、
大勢で押し寄せ、歌碑などが荒らされるということが頻発するようになり、
万葉集仲間でも、手放しでは喜べないねという雰囲気になっています。
私の師匠のT先生も激怒して、自費で看板を作って設置していました。

歌碑。
繰り返しますが、富山は万葉集の故地ということもあって、
歌碑はたくさんあって、県民に親しまれています(と私は思っています)。

歌番号4017 歌番号4022

たとえば、左側の歌碑。
これは富山県射水市の放生津八幡宮というところにある歌碑です。
八幡宮ですから祭神は誉田別尊で、天皇家には関係の深い神社ですが、
746年に、越中守大伴家持が宇佐神宮から勧請したと伝えられています。
歌碑には、万葉仮名で、
安由乃風以多久吹久良志奈呉能海人農釣春流小舟己機隠留見遊」と書かれています。
万葉仮名はひらがなが発明される前の公式表記で、字自体に意味はありません。
1文字1音として、これを読み下すと、
「東風 いたく吹くらし 奈呉の海人の 釣りする小舟 漕ぎ隠る見ゆ」、
つまり、「東風が強く吹いているらしい
奈呉の海人の、釣りをする小舟が漕ぎ進んでいるのが波間に見える」という、
なんというか、荒涼とした水墨画的な風景が浮かび上がってきます。
美しいですよね。

たとえば、右側の歌碑。
これは富山県富山市の鵜坂神社の裏手にある歌碑です。
宇佐可河泊和多流瀬於保美許乃安我馬乃安我枳乃美豆爾伎奴奴礼爾家里
と読めますね。
「鵜坂河 渡る瀬多み この我が馬の 足掻きの水に 衣濡れにけり」ということで、
「鵜坂川には渡る瀬がいくつもあって、
この私の馬の掻き上げる水しぶきに、着物がすっかり濡れてしまった」という、
こちらは躍動感あふれる情景が思い浮かびます。

詠んだ大伴家持は奈良時代の貴族で、国司として富山に赴任していました。
つまり、単身赴任というわけで、
基本的に、任地である富山の風景の美しさを詠んだ歌が多いわけですが、
単身赴任ゆえに…という感情を詠んだ歌もあります。

歌番号4020 歌番号4002

故之能宇美能信濃乃波麻乎由伎久良之奈我伎波流比毛和須礼弖於毛倍也」。→写真左
この歌は「越の海の 信濃の浜を 行き暮らし 長き春日も 忘れて思へや」ということで、
つまり、「越の海に沿った信濃の浜を一日歩き暮らしたが、
この長い春の日、片時も都の家族を思わずにはいない」という意味です。
風景の描写は抑えられ、都に残してきた家族への思いが詠まれています。
それにしても、この歌碑は魚津市の海岸にあるのですが、
これを揮毫した高瀬重雄という方は実に親切で、
同じ歌碑に書き下し文も彫ってくださっています。
高瀬さんは、歌番号4002の、大徳寺にある歌碑も揮毫されていて、
そちらも、やはり書き下し文も彫ってくださっています。→写真右

どう思われますでしょうか。
私は、実は、強風で揺さぶられる釣り船を見ても、
水しぶきで着物を濡らしている様子を目にしても、
あまり心が動かされるタイプではありません。
しかし、もともとメディテーションのようなことは得意な私、
必ずしも感性が腐っているということではなく、
単なる、関心領域の傾向性ということだろうと自負しています。
つまり、光景そのものではなく、それを見た人がどう感じるのか、
人の心情に興味があるのですが、
そんな私からしてみれば、家持の情景を詠むセンスは秀逸と感じます。
もちろん、父(大伴旅人)や叔母(大伴坂上郎女)の影響もあるでしょうが、
都から遠く離れた赴任地で伸びやかな感性が花開いたのだなと、
鵜坂の川とか越の海とか、
同じ景色を見ながら感慨深く感じます。

ところで、富山は万葉集の故地ということで、
もともと、図書館などに万葉集コーナーなどが常設されていることも多く、
私たち万葉集マニアは普段からそういうのを重宝しているのですが、
最近は、そういうコーナーを利用すると、
「あぁ、元号のアレで、万葉集、流行ってますからね ニヤリ」と、
司書の方から声を掛けられることが多くなりました。
本当は20年モノのマニアなのですが、
ブームに乗ったと思われているようで、少し恥ずかしいです。

[SE;KICHI]
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No title

おお! 富山では、普通の会社員の方が歌碑の写真を撮ったり、万葉仮名を読み下したりできるのか! 富山、すごい!
そちら(富山)は県民が万葉集に親しんでいると聞くので、つまらないことを言う者はいないのだろうが、全国では、「令和」と聞いて、「命令を連想する」とか「冷たい感じがする」などと、しょうもないことを言う者がいる。
全国的には「命令」とか、なんでも漢語の熟語を連想してしまう、妙なクセがついているようで、残念だ。この「令」の字は、出典が万葉集って言ってるんだから、命令などという熟語と関係あるはずはない。神に命じられた使命に従う決意を示したものだと私は思う。
今年は己亥なのだから、心して過ごしたい。
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