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おきくさんを偲んで

9月に、長崎の浦上村のキリシタン一家が、一家離散で迫害を受けたうえ、
身重の妻・おきくが難産の末に命を落としたというエピソード
を書いたところ、
この話は富山の人でも知らない方が多かったらしく、
もっと詳しく書けと、いろいろとお問い合せをいただきました。

このきくという女性は、富山藩に預けられた浦上キリシタンたちのなかで、
一種のアイコンになっている存在です。

明治2年12月5日、肥前浦上村(現長崎市浦上地区)、
「浦上四番崩れ」と呼ばれる、
日本宗教史上でも特筆されるべき“隠れキリシタン弾圧”が始まりました。
詮議は村民すべてに行われ、詮議中に棄教を表明した者を除く3416名が、
続々と捕縛されて流罪に処されたといいます。

重次郎一家(重次郎 35歳、妻・きく 33歳、長女・さき 15歳、次女・とめ 4歳)は、
同年12月8日、長崎大波止桟橋を出港し、
大阪からは徒歩で、厳冬の北陸路に難渋しながら、
明治3年2月21日、富山藩に到着し、
大熊村の「経力の湯」と大久保村の「合田の湯」に入りました。

温泉と言っても、湯治ではないので、楽しくはありません。
信徒たちは、長崎を出る際に既に殉教を覚悟していたので、
曳き立てられた時点で、どこかに連行されて殺されるものだと思っていたようです。
従って、温泉に家族と一緒に収容されていても、
死刑執行を待つような身で、祈るしかない状態だっただろうと思います。
よくパニックにならなかったなと思いますが、それが信仰の力なのでしょう。

温泉に収容していたキリシタンたちが、一向に説得に応じないので、
焦った富山藩は明治3年4月28日、意図的に家族を離れ離れにし、
15歳以上のキリシタンに鉄の喉輪を嵌めて浄土真宗29寺院に配属しました。
5月1日、きくと、4歳の次女トメが、
西光寺という寺(富山市婦中町長沢)に預けられました。

西光寺

これより前の4月10日に、15歳だった長女のサキは一人で他の寺に送られ、
5月28日には夫の重次郎が楽入寺という別の寺へ移送されました。
もはやこの時点で臨月のきくでしたが、家族バラバラになったわけです。

きくは5月末が出産予定でしたが、
それを過ぎてもまだ出産しないのを耳にした重次郎は、
妻を案じ、介抱のために西光寺を訪れたい旨を申し出ましたが、
そんなことが許されるはずがありません。
私は、こんな卑劣なことを考えた役人に対して、
腹が立つという言葉では足りない思いがするのですが、
役人は重次郎に、改心して真宗門徒になれば、首輪を外してやろう、
家族の面会を許し、仕事も与え、帰郷にも配慮すると囁きました。
重次郎は、浦上では指導的というか、中心的な信者だったようですが、
この……家族の面会を許し……にグラっときたのでしょう、
6月の初めに改宗の届けを提出し、きくが伏せる西光寺に赴きました。

信仰を捨てることと引き換えに妻を見舞うことができた重次郎でしたが、
きくは間もなく産気づき、難産の末、母子共に死亡しました。
西光寺で死亡したきくは、村の火葬場で焼かれ、その片隅に埋葬されました。

その後、きくを哀れに思った地元民によって、山中に供養のための地蔵尊が建てられました。
行ってみましょう。

きくの塚 入口 きくの塚 アプローチ

蚊の猛攻に遭いながら数百メートルも登ると、
天頂部に十字架のついた祠が見えてきます。
火葬場に埋葬されているので、ここは「墓」ではありませんが、
小高くなっているところを見ると、遺灰か何か埋めたんでしょうか。

きくの塚 きくの塚 近影

祠が開いているというのもシュールなもんです。私が開けたわけではありません。
覗いてみると、2体の像。
右に地元の人が建てたという地蔵尊、左にカトリック教会によるマリア像。

きくの塚 内部

怖いですねぇ。
ちょっと画像が暗いですが、これに照明を当てる勇気のない私、勘弁してください。

この2体の像、賛否あると思いますが、私は強い違和感を感じます。
だって、きくはキリシタンで、地蔵なんて信仰していなかったわけですから、
供養するならマリア像だけで充分なんです。
浄土真宗に帰依する地元民の気持ちも分からなくはないけれど、
「関係ないのを勝手に混ぜんなよ」という気持ちになります。

さて、キリスト教を捨て、晴れてキクに会えたものの、
一週間ほどで妻子を亡くすこととなった重次郎。
気の毒でなりません。
妻を亡くしてしまってはキリスト教を捨てた意味もないので、
まもなく彼は、改心戻しをしたいとの願書を出し、キリスト教徒に復帰しました。
それから3年後の明治6年、政府はキリスト教禁制をやめたので、
重次郎らキリスト教徒は釈放され、長崎に戻って行きました……。
……新しい奥さんとその間に生まれた子供と一緒に!
どうも、重次郎は、きくが亡くなった後、
合寺令で1箇所に押し込められているときにヌイという女性と恋に落ちたようで、
あっという間に再婚し、ツネという娘が生まれたようです。

え~・・・
いや、私も、そう模範的な生き方をしているわけではありませんが……。
長崎から遠く離れた富山の山中に置き去られたおきく。
かわいそうでなりません、よね。

[SE;KICHI]
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