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「孤峯の雪」

私は、別にことさら孤独を愛するタイプというわけでもないのですが、
自分の雅号(日本的なことをするときの名前)に「孤」という字が入っているためか、
「孤」の字が目に入ると、ちょっと反応してしまうところがあります。

先日、東京でお招きいただいた料亭は、お座敷が全部で5室あり、
私たちのお座敷は「孤峯の雪」という名前で、「孤」の字にちょっと反応。
他の4室は「隣家の梅」、「緑樹の林」、「尾花の露」、「琴の音」。
おおおおっ、風流だ。

・・・・・・もしかして、言っていること、伝わっていませんですかね?

私は、「文香」という、手紙などに香りをつけるお香を愛用していて、
仕事で使っている名刺に香り付けしているなど、香道がわりと好きです。

香道とは、端的には香木を焚いて楽しむものですが、
香りを聞く「聞香」と、香を聞き分けて当てる「組香」があり、
このうちの組香が、ざっくり言うと「この香り、なぁ~んだ?」という、
なんとも雅なゲームになっています。

具体的には、“三種香”という聞香の作法のようなものがあります。
まず、香元と呼ばれる主催者によって香木が3種類、選ばれます。
この香木から各3片、合計9つの香片が作られます。
ここからランダムに選ばれた3つが、
1つずつ香炉で焚かれ、その香炉が参加者に回されてきますので、
各々、作法に基づいて香りを聞いて、香炉を次の参加者へと回して行きます。
最初に選ばれた香木は3種類ですから、当然、香炉は3台回ってきます。
参加者は、その「おや? 最初のと3つめの香りが似てる? いや違うか?」とか、
そういうことを考えながら香りを聞くわけです。

すべての香りを聞き終わったら、
「3種類のなかに同じ香りはあったか、あったとすれば何番目と何番目か」を、
硯と筆を使って解答用紙に書くことになるのですが、
はい、ここで。
数学の順列組み合わせみたいな話ですが、
「3種類のなかに同じ香りはあったか、あったとすれば何番目と何番目か」は、
「1=2」、「1=3」、「2=3」、「1=2=3」、「1≠2≠3」の、
全部で5通りしかありませんので、
この5通りから1つを選ぶのが“三種香”の解答になります。
つまり5択。
ただし、解答は3本の縦線を基本とした“香乃図”というので表現します。
たとえば、「あっ、最初のと3つめの香りが一緒だ」と思ったら、
3本の縦線の、右から1本目と3本目の頭に線を書き足してつなぐという、
まぁ、記号によって回答するわけです。
そして、さらに、この5種類の解答記号には、
「1=2」には「隣家の梅」、「1=3」には「孤峯の雪」、
「2=3」には「琴の音」、「1=2=3」には「尾花の露」、
そして「1≠2≠3」には「緑樹の林」と名前がついているので、
それも併せて記載しなければなりません。
つまり、「あっ、最初のと3つめの香りが一緒だ」と思ったら、
解答用紙に3本線の記号を書き、さらに「孤峯の雪」と書くわけです。
『隣』とか『露』とか、難しい字を硯と筆を使って書くことになるので、
香道をやる人は自動的に書道も練習せねばならぬというシステムです。

三種香乃図 http://www.isuzujuku.org/?p=8223

というわけで、通されたお座敷が「孤峯の雪」という名前で、
他の4室は「隣家の梅」、「緑樹の林」、「尾花の露」、「琴の音」って、
おおおおっ、風流だ。と感じたわけです。

ところで、この話には意外と広がりがあります。
この“三種香”は、3つの香りを聞いて同じ香りを当てる遊びですが、
もちろん、4つの香りや5つの香りから当てることもできるはずです。
4つの香りを聞き当てる遊びを“系図香”といい、
全部で15通りの香乃図があり、伊勢物語にあやかった名前が付けられています。
そして、5つの香りを聞き当てる遊びを“源氏香”といい、
その、全部で52通りの香乃図は、源氏物語全54帖のうち、
「桐壺」と「夢の浮橋」の2帖を除く52帖の巻名が付けられています。
たとえば、6年ほど前、私は花散里が好きと告白したことがありましたが、
香道では、1つ目と3つ目、2つ目と4つ目の“ツーペア”がある組み合わせを、
源氏物語 第11帖にあやかって「花散里」と呼びます。

花散里 https://x181.secure.ne.jp/~x181007/kamon/shop/70011.html

ここにきて、書道だけではなく、
香道をやる人は自動的に源氏物語も記憶していなければならないという、
ちょっと恐ろしいシステムです。

そしてさらに、この“源氏香”の52通りの香乃図は、そのデザインが美しいので、
着物や重箱などの模様とか、家紋としてもよく使われ、
また和菓子の意匠などにも、使われます。
家紋が好きな私にとって、見過ごせない朗報です。

源氏香
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Genjiko-zu.PNG

というわけで、香道は、その先に、源氏物語や家紋があるという、
実に私好みの遊びなのです。
なんの話だったか見失うところでしたが、
そういうわけで、座敷の名前が「孤峯の雪」、
私好みの風流で興奮しちゃうというわけです。

[SE;KICHI]
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