有名な言葉ですが、
これは、とある番組のメインテーマ曲の方を想像する方がいると思います。
26年前の1995年、NHKが戦後50周年、NHK放送70周年、
そして映像発明100周年を記念して、アメリカのABC局と合同で取材、製作放映した、
『映像の世紀』というドキュメンタリー番組をご存知でしょうか?
https://thetv.jp/news/detail/63625/354776/世界30ヵ国以上の映像や記録から貴重なものを取材して収集し、
世界初の映画上映とされている『工場の出口』という作品からスタートし、
20世紀という大きな時代の流れとうねりを、
様々な視点と証言、回顧録のナレーションを通して、歴史的に並べられています。
この番組は、製作に5年以上も時間を要され、
放映された当初1995年には大きな反響を呼び、
その後何度も再放送されている、人気の番組となっています。
先日から夜中に総合チャンネルで再放送されており、
たまたま観たのですが、テレビの前から離れられなくなってしまいました。
それはただ単に、面白い内容だからとか、珍しいとか、
そんなことだけではないからです。
私がこの番組に出会ったのは、
高校3年生の総合社会という、いわゆる公民のような授業でした。
映像を視聴するのが中心で、板書だとかノートだとか、
普通の授業などと比べれば比較的楽な授業だったものですから、
もともと社会科も得意だし、割と楽しみにして臨んでいました。
いつもの様に視聴覚室というスクリーンのある部屋に移動すると、
「これから見る映像は、かなり衝撃的な映像も出てくると思う。
世界史にも通じる内容だけども、
一生に一度は目にしておくべきものだろうから、心して見るように。」
と、当時23歳の若きエリート教師の河◯先生という方が話しました。
私の高校は圧倒的に女子の割合が多い学校でしたので、
そんなこと言われても、若い女子生徒達は話しそっちのけで私語に夢中。
(まぁ母校はそういうところでしたので…)しかし、いざ映像が始まってみると、そんな女子達も皆、人が変わったように、
映像に釘付けになってしまいました。
もちろん私も例外なく、真剣に観入っていました。
その映像は、先述の映画から始まり、
ライト兄弟の初飛行、第一次世界大戦、世界恐慌へと続く内容でした。
ドキュメンタリーなので、本物の映像と証言が続く内容でしたが、
その内容があまりに衝撃的で、生々しいのです。20世紀は戦争の世紀とも言われていますから、
もちろん塹壕の映像や兵器、毒ガスなど、戦争の映像も多く残っていました。
当時の生活の様子から悲惨な戦争の映像まで、
過酷な時代を生きた人々の様子は、観る者を釘付けにしました。
結局、皆、静まりかえって、真剣に観ていたのを覚えています。
次の授業も、その続きからでした。
次は、“第4集 ヒトラーの野望”と“第5集 世界は地獄を見た”というタイトルで、
連続して視聴しました。
その内容は、
主にあのナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーが権力を握るまでの過程と、
その後のドイツが中心となった、第二次世界大戦までの構成でした。
時代として、1920年代〜30年代、40年代前半のドイツを中心に、
世界の情勢が描かれています。
https://ichi.pro/adorufu-hitora-no-yuiitsu-no-kyofu-42776171931054第一次対戦の敗戦後、彷徨える国民に、
熱っぽく訴える新しい思想、ファシズムの指導者の登場に、
ドイツ国民は新しい指導者を求めた、そんな時代の狂気。
ヒトラー政権発足後は、公共投資やアウトバーン完成などからの工業化による、
立国と雇用対策といった内政面の成功に加え、
外政では禁じられていた再軍備を推し進めて軍事大国と化していく様が、
生々しく映像から伝わってきます。
特に忘れられないのが、
敗戦後のホロコーストに代表されるユダヤ人強制収容所の映像です。
場所は著名なアウシュビッツでしたが、
戦後、連合国側の撮影手が撮った映像に、
そこで起きた恐ろしい事が写されていました。
虐殺されたユダヤ人を始めとした人達の遺体の様子、
それをブルドーザーでゴミのように処理する様子など、
高校生の私には印象的というか、もはやトラウマのように残りました。
こんな映像が残っているのか!、
こんなことが起きたのか、、と。
先生が言ったことがフラッシュバックしました。
今回の映像は、前回の授業よりもあまりにも過激な内容が多く、
私は大変なショックを受けてしまいました。(おそらく、皆もそうであったのではないかと思います。クラスの女子達も前回以上に静かでした。)一度聴いたら耳に残る、象徴的なメインテーマ曲の効果もあってか、
忘れられない記憶となりました。
https://www.youtube.com/watch?v=6QdCsxw16Tg少し話はズレますが、
私は中学生の頃から戦闘機などのプラモデル製作にハマり、
よく対戦中の零戦など作っていました。
プラモデル製作そのものが好きだったので、
宇宙戦艦ヤマトや飛行機モノなど、いろいろ作っては並べていたのが懐かしいですね。
今でも家電屋の模型コーナーに行くのは楽しみです。
その中で第二次世界大戦関連としてドイツの歴史などに触れる機会もあり、
なんとなくの大筋は学校の勉強と同じくらい知っていました。
夏が来るたび、戦争に関する番組や祖父母が経験した空襲の話など、
私も含め、多くの人も似たような経験がある中、成長してきたかもしれません。
戦争を経験していない世代の私たちは、
戦争は絶対にしてはいけないと教えられ、
理屈ではそうだと分かっていても、
本当に実感できることがなかなかできなかったのです。戻りますが、
そんな映像を見た私は、初めて戦争というものをイメージし、
その僅かでも実感できたと思ったのです。
おそらく、写真のみならず、映像だからこそ実感しやすい、
テレビが当たり前にある時代に生まれ育った私たちだからこその、
感覚かもしれません。
衝撃的でしたが、これは絶対に見ておかないといけないと、
高校生ながらに思ったのでした。
その後、
この番組のことを他校の友人に語る機会がありましたが、
どうやらその友人達も、授業で観せられるらしく、
教育の一環として取り扱われているということも分かりました。
(図書室に「映像の世紀」のDVDが全巻揃っているのです。おそらくどこの学校も同じかと。)とにかく、あの衝撃は忘れ難く、
ナチスとファシズムが存在したあの時代に、個人的に興味を持ち、
自主的に調べたりしました。
ヒトラーとは何者だったのか?
ナチス・ドイツとは?
あの戦争の時代とは?
受験勉強しなければいけない中でしたけど、
1人図書室に行って、好奇心のまま調べてしまっていましたね。
https://culturemk.exblog.jp/23554266/また、先述の一度聴いたら忘れられないと言った、
印象的な曲「パリは燃えているか」は、有名な作曲家である加古隆氏の作曲。
番組内で何度も流れるメインテーマであり、
激動の時代を生きた人間達の、生き様、功罪、光と影を見事に表現した、
この番組らしい厳かな曲となっており、
本放送当時、この曲についての問い合わせも殺到し、
ついにサウンドトラックの発売に繋がった経緯もあります。
皆さまもどこかで聴かれたことがあるかもしれません。
私も直ぐにこの曲のサントラも調べて、TSUTAYAに借りに行きました。
今でも歴史の勉強や研究の時間にはもってこいで、聴いていたりします。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%91%E3%83%AA%E3%81%AF%E7%87%83%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%8B-%E2%80%95-NHK%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%80%8C%E6%98%A0%E5%83%8F%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%80%8D%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%89%88-%E5%8A%A0%E5%8F%A4%E9%9A%86/dp/B00005HMO6さらに当時、推薦入試受験での、面接の練習を担当してくれた先生から、
手塚治虫氏作の隠れた名作、『アドルフに告ぐ』という晩年の作品を教えてもらい、
これも図書室にあったので、読んでみることにしました。
この作品も、ヒトラーを取り巻く人間たちの半フィクションの物語なのですが、
再び衝撃を受けました。
面白く、かつ読者に対して考えさせられる内容となっており、
半ば夢中で忘れられなくなり、一気読み。
個人的に購入までしました。
(この作品については、また別の機会で触れたいと思います。)詳しくは映像を見てもらえば分かるかと思いますが、私は観ることをお薦めします。
特に、8月はかつての戦争に関する出来事が多い時期もあり、
それについて考えたり触れたりする機会も増えるかと思います。
この番組を観て、追体験というよりも勉強してみてはいかがでしょうか。
(TSUTAYAなどのレンタルショップに行くよりも、図書館などに行った方がありそうですね。再放送などでテレビでも観れます。)ちなみにこのタイトルですが、
"パリは燃えているか?"(ドイツ語:Brennt Paris?) (英語:Is Paris Burning?) というのは、
ナチス・ドイツの指導者である、アドルフ・ヒトラーの言葉です。
大戦末期の1944年6月、連合国側により200万人以上を投じられ、
反撃の転機となった、史上最大の作戦と呼ばれる、
フランスのノルマンディーに上陸したネプチューン作戦
(通称ノルマンディー上陸作戦)の後、
8月にはパリまで侵攻。
ドイツ軍による占領から、レジスタンスと共に解放する、
パリの開放に関することでした。
この時、ヒトラーは現地支配を担当した軍事総督・コルティッツ将軍に、
パリを防衛ラインとして死守し、これが不可能であれば、
セーヌ川に架かる橋やパリの街を産業ごと破壊して、
完全に廃墟にして撤退するように指示しました。
ヨーロッパ全域に展開しているドイツ軍や国民の、
士気に影響するのを恐れたのでしょう。
「パリは、どんなことがあっても敵の手に渡してはならない。
もし敵に渡すようなことがあっても、そのときはパリは廃墟になっているだろう」
という言葉も残っています。
しかしそんな事をすれば、パリ市民が一斉に蜂起し、
自軍を壊滅に追いやってしまうこと、双方大きな遺恨をこの地に残すことなど、
コルティッツ将軍には想像がついていました。
結局、示威行動などで牽制して大規模蜂起を抑えつつ、
あの手この手でパリ破壊を阻止。
この時の行動の思惑は戦後色々と検証されていますが、
最終的に連合国軍に侵攻を許されたこと、
レジスタンス蜂起などが重なり、他勢に無勢、降伏しました。
この時、パリの進まない状況に苛立ったヒトラーが、
近くの司令官に対して、「パリは燃えているか?」と叫び、
遠隔射撃や爆撃でパリを焦土とするよう指示したと記録に残っています。
コルティッツ将軍は、
はたから見れば、軍人ながらもヒトラーの命令に背いた逆臣ですが、
パリを崩壊から救った英雄として、戦後名誉パリ市民に選ばれています。
もし破壊されていたなら、
現在のパリ、さらにはパリを中心とした文化そのものが、
存在していなかったかもしれませんね。
今というのは、過去の様々なことの結果であると感じます。

上:パリ解放後のパレードでのドゴール将軍(http://lgmi.jp/detail.php?id=2315)
下:同じくシャンゼリゼ通りを歩くココ・シャネル(https://parisdiary.fr/le-discours-de-bertrand-delanoe-25-aout-2009-liberation/)これを踏まえ、改めてメインテーマのタイトルの意味を知り、
聴いてみたら、また違って聴こえてくる気がします。
まさに、このテーマ曲は人間の明暗の歴史をよく表した、秀逸な曲でしょう。
戦争が全てではない作品ですが、
人類の歴史を作ってきたのは、間違いなく我々人間です。
こんな時期でもあります。
戦争を始め、目を背けたくなることも、
映像のみならず、人生そのものにも多々あると思います。
しかし
過去を見つめ、学び、未来を作っていくことは、
人生においても、平和な社会を作っていくことにも、
大切なことです。
二度とこんなことを繰り返さない為にも、
歴史を学ぶことは絶対に必要であると、この番組を観て、改めて思いました。
様々な歴史を学び、顧みる時、この『映像の世紀』も、
ひとつの資料として振り返ってみてはいかがでしょうか。
[K.K]