鉄の失敗談④
北陸から新潟に向かおうとする時、
北陸各駅から北陸新幹線で上越妙高駅まで行き、
そこから『特急しらゆき』というのに乗り換えるのが一般的です。
北陸新幹線も特急しらゆきも、そう混む列車ではなく、
自由席でも座れないということはないため、
JRとしても往復の自由席をパッケージにした、
『新潟自由席往復きっぷ』という割引切符まで用意しています。
まぁ、とにかく、北陸から新潟は上越妙高乗り換えと覚えといてください。
ある時、新潟に向かおうとした私。
誰もがそうするように、新幹線のなかでは書類に目を通したり、
メールを書いたりして過ごします。
その日の私もそうしていたわけですが、
時期的に少し無理が続いていたせいか、ついつい、途中でうとうとしてしまいました。
ハッと目覚めた時、列車はどこかの駅に入線しており、発車ベルが鳴っている状態。
「どこっ?」と跳ね起き、ホームの駅名標を確認したところ、「上越妙高」。
ヤバイ、降りる駅じゃん! と、飛び上がって、
荷物をひっ掴んで乗降口に走ったものの、
無情にも新幹線の扉は目の前でプシューと閉まり、やがて走り出したのでした。
寝過ごしてしまったたものは仕方ないので、
席に戻ってスマホを繰り、リカバリーの方法を検索します。
調べの結果、次の飯山で降りて上越妙高に戻ったところで、
特急の接続が悪いため、新潟へ着くのは夜になってしまう見通し。
もちろん仕事で行くわけなので、夜になってしまうのでは意味がありません。
悩んだ挙句、結果的に新潟に早く着く方法ということで、
次の飯山では降りず、そのまま7つ先の高崎まで乗って、
高崎から上越新幹線で新潟に向かうことにしました。
高崎到着。
ここまでのところを精算しようと、自動改札の脇の窓口に向かいましたが、
高崎の駅員さんは、北陸と新潟を結ぶ割引切符なんて知りません。
15分ほど、どこかに電話を掛けたり、いろいろ調べてもらって、
なんとかその時点での精算額が判明したようです。
待っている間、私の目には気になる張り紙が。
「こちらの窓口では現金のみお取り扱いいただけます。」
えっ、いまどき?
……ということもないのですが、
以前にも告白したことがあるとおり、
私は、現金を持ち歩くということを、あまりしませんし、
銀行のキャッシュカードも持ち歩かない主義です。
今回だって、乗り過ごすつもりで準備をしていたわけではないので、
たしなみとしてクレジットカードは持っていますが、
現金など持っていませんし、キャッシュカードもありません。
高崎までの精算額を確定させた駅員さんの機先を制して私は言います。
「現金はないのですが。」と。
すると、駅員さんは「えっ!」という顔をして、しばし固まったあと、
近くのATMを指さし、下ろしてくるように言います。
しかし、私は現金もキャッシュカードも持っていません。
「払え」→「ない」→「下ろしてこい」→「下ろせない」→「じゃあ精算できない」という、
堂々巡りの押し問答が10分ほど繰り返されたところで、
ついに駅員さんが折れまして、
「乗車証明書を発行するから、着駅で精算してください」と。
つまり、「新潟まで行って、新潟で精算しなさい」ということで、
高崎駅としては新潟駅に取り扱いをなすりつけた形です。

私は少しだけ憤りました。
この、政府によってキャッシュレス決済が推奨され、
国民にもずいぶん浸透してきたと思われる令和の日本で、
現金でないと決済できないなんてことがあっていいのだろうか、と。
しかも、ここは天下のJRであって、世が世なら国鉄の窓口です。
現金しか使えないなら、もう少し申し訳なさそうにしてもよさそうなものですが、
「そこで下ろしてこい」とは不親切ではないか、なんて、
自分が悪いのも棚に上げ、「どうしろというのですか!」と、
声を荒げることすらありませんでしたが、密かにムッとします。
ともあれ、晴れて仮釈放となったので、上越新幹線で新潟に向かいます。
その道すがら、またスマホを繰り、
JRに後日現金を届ける“支払猶予”という制度があることを突き止めた私。
新潟で、なんとかクレジットカード払いを認めてもらえるよう頼むか、
それがダメなら支払猶予をお願いしようと作戦を練ったわけです。
新潟到着。
すべてを精算しようと、自動改札の脇の窓口に向かいました。
新潟の駅員さんは、もちろん北陸と新潟を結ぶ割引切符はご存じでしたが、
高崎経由で使用されるとは想定されていなかったようで、
私が経路を説明すると、でっぷりとした初老の駅員さんが、
「へっ?」みたいな顔をして、奥の事務所に引っ込みます。
10分ほどして戻ってきた駅員さんは、
「この切符は、この区間は含まれているんです……
しかし、あなたは高崎に向かわれたから、その分の特急券が……」とか、
噛んで含めるように経路を確認して、
「これは結構お金かかるよ」とか言いながら、差額を算出してくれます。
お気づきかもしれませんが、私は金額なんてどうでもいいのです。
ミスをして寝過ごしたのは私なので、発生してしまった差額運賃はお支払いします。
それより私にとって一大事なのは、手持ちの現金がないうえに、
引き出すためのキャッシュカードも持っていないこと。
つまり、現金決済のみと指定されたら、
私は支払うことができず、改札から出られません。
私は言い放ちます。
「乗り過ごすつもりはなかったので、現金はないのです。」と。
駅員さんは、「えっ! ……現金がない?」と絶句します。
ここでは「そこのATMで下ろしてこい」などと不親切なことは言われませんでしたが、
案の定、狼狽した様子の駅員さん、すぐに事務所の奥に引っ込みます。
すぐに引っ込まれてしまったので、何の交渉にも入れませんでしたが、
私としては、クレジットカードだけはあったので、
なんとかクレジットカード払いを認めてもらえないか、
もしそれがダメなら支払猶予、しかもここは自宅から離れた新潟なので、
自宅近くの駅にお納めすることで許してもらうか、
もしくは書留等で送金するという方法で改札を出してもらえないか、
とにかく、駅員さんが戻ってきたらその手の交渉をしてみようと、
その場で再び10分待ちました。
改札横の窓口は無人となり、
そこにあんまり長く放置されるもんだから、人目に触れること甚だしく、
そのまま逃げようかと思ったほどですが、社会人としてそこはグッと我慢して待ちます。
人々の好奇の目にさらされながら合計20分ほど待ったころ、
駅員さんが再び登場。
「……今回は大目に見ましょう。」
……❕❔
「次からは寝過ごさないようにということです。」
と、なんと、突如、無罪放免となったのでした。
富山⇔新潟の『新潟自由席往復きっぷ』は、14,000円ほどの往復切符です。
今回の乗り越しでは、本来、1万円ほどの差額が出ているはずであり、
価格のバランスからしても、JRがそれを許すとは少しも思っていなかった私、
この結論は本当に予想外で、びっくりし、
よくよく、その駅員さんにお礼を言って窓口を去ったのでした。
とはいえ、当初の到着時刻よりも2時間近く遅れて駅の外に出た私。
しかも、このようなことがあっても、現金も持っておいたほうがいいだろうかとか、
何かのためにキャッシュカードも持っておこうとか、
自らをそういう方向に改めようとは少しも思いませんでしたので、
教訓があるとすれば、やはり「寝過ごさないように注意しよう」しかありません。
それか、ひと駅前の糸魚川駅までは起きていた覚えがあるので、
「あとひと駅のところで眠りに入らないようにしよう」でしょうか。
というわけで、キャッシュレス全盛のいまどき、現金のみなんてどうかしてるわ!と、
いったんは国鉄体質に憤った私でしたが、
最終的に、優しくしてくださった駅員さんに感謝している私、
現金なものです。
[SE;KICHI]
北陸各駅から北陸新幹線で上越妙高駅まで行き、
そこから『特急しらゆき』というのに乗り換えるのが一般的です。
北陸新幹線も特急しらゆきも、そう混む列車ではなく、
自由席でも座れないということはないため、
JRとしても往復の自由席をパッケージにした、
『新潟自由席往復きっぷ』という割引切符まで用意しています。
まぁ、とにかく、北陸から新潟は上越妙高乗り換えと覚えといてください。
ある時、新潟に向かおうとした私。
誰もがそうするように、新幹線のなかでは書類に目を通したり、
メールを書いたりして過ごします。
その日の私もそうしていたわけですが、
時期的に少し無理が続いていたせいか、ついつい、途中でうとうとしてしまいました。
ハッと目覚めた時、列車はどこかの駅に入線しており、発車ベルが鳴っている状態。
「どこっ?」と跳ね起き、ホームの駅名標を確認したところ、「上越妙高」。
ヤバイ、降りる駅じゃん! と、飛び上がって、
荷物をひっ掴んで乗降口に走ったものの、
無情にも新幹線の扉は目の前でプシューと閉まり、やがて走り出したのでした。
寝過ごしてしまったたものは仕方ないので、
席に戻ってスマホを繰り、リカバリーの方法を検索します。
調べの結果、次の飯山で降りて上越妙高に戻ったところで、
特急の接続が悪いため、新潟へ着くのは夜になってしまう見通し。
もちろん仕事で行くわけなので、夜になってしまうのでは意味がありません。
悩んだ挙句、結果的に新潟に早く着く方法ということで、
次の飯山では降りず、そのまま7つ先の高崎まで乗って、
高崎から上越新幹線で新潟に向かうことにしました。
高崎到着。
ここまでのところを精算しようと、自動改札の脇の窓口に向かいましたが、
高崎の駅員さんは、北陸と新潟を結ぶ割引切符なんて知りません。
15分ほど、どこかに電話を掛けたり、いろいろ調べてもらって、
なんとかその時点での精算額が判明したようです。
待っている間、私の目には気になる張り紙が。
「こちらの窓口では現金のみお取り扱いいただけます。」
えっ、いまどき?
……ということもないのですが、
以前にも告白したことがあるとおり、
私は、現金を持ち歩くということを、あまりしませんし、
銀行のキャッシュカードも持ち歩かない主義です。
今回だって、乗り過ごすつもりで準備をしていたわけではないので、
たしなみとしてクレジットカードは持っていますが、
現金など持っていませんし、キャッシュカードもありません。
高崎までの精算額を確定させた駅員さんの機先を制して私は言います。
「現金はないのですが。」と。
すると、駅員さんは「えっ!」という顔をして、しばし固まったあと、
近くのATMを指さし、下ろしてくるように言います。
しかし、私は現金もキャッシュカードも持っていません。
「払え」→「ない」→「下ろしてこい」→「下ろせない」→「じゃあ精算できない」という、
堂々巡りの押し問答が10分ほど繰り返されたところで、
ついに駅員さんが折れまして、
「乗車証明書を発行するから、着駅で精算してください」と。
つまり、「新潟まで行って、新潟で精算しなさい」ということで、
高崎駅としては新潟駅に取り扱いをなすりつけた形です。

私は少しだけ憤りました。
この、政府によってキャッシュレス決済が推奨され、
国民にもずいぶん浸透してきたと思われる令和の日本で、
現金でないと決済できないなんてことがあっていいのだろうか、と。
しかも、ここは天下のJRであって、世が世なら国鉄の窓口です。
現金しか使えないなら、もう少し申し訳なさそうにしてもよさそうなものですが、
「そこで下ろしてこい」とは不親切ではないか、なんて、
自分が悪いのも棚に上げ、「どうしろというのですか!」と、
声を荒げることすらありませんでしたが、密かにムッとします。
ともあれ、晴れて仮釈放となったので、上越新幹線で新潟に向かいます。
その道すがら、またスマホを繰り、
JRに後日現金を届ける“支払猶予”という制度があることを突き止めた私。
新潟で、なんとかクレジットカード払いを認めてもらえるよう頼むか、
それがダメなら支払猶予をお願いしようと作戦を練ったわけです。
新潟到着。
すべてを精算しようと、自動改札の脇の窓口に向かいました。
新潟の駅員さんは、もちろん北陸と新潟を結ぶ割引切符はご存じでしたが、
高崎経由で使用されるとは想定されていなかったようで、
私が経路を説明すると、でっぷりとした初老の駅員さんが、
「へっ?」みたいな顔をして、奥の事務所に引っ込みます。
10分ほどして戻ってきた駅員さんは、
「この切符は、この区間は含まれているんです……
しかし、あなたは高崎に向かわれたから、その分の特急券が……」とか、
噛んで含めるように経路を確認して、
「これは結構お金かかるよ」とか言いながら、差額を算出してくれます。
お気づきかもしれませんが、私は金額なんてどうでもいいのです。
ミスをして寝過ごしたのは私なので、発生してしまった差額運賃はお支払いします。
それより私にとって一大事なのは、手持ちの現金がないうえに、
引き出すためのキャッシュカードも持っていないこと。
つまり、現金決済のみと指定されたら、
私は支払うことができず、改札から出られません。
私は言い放ちます。
「乗り過ごすつもりはなかったので、現金はないのです。」と。
駅員さんは、「えっ! ……現金がない?」と絶句します。
ここでは「そこのATMで下ろしてこい」などと不親切なことは言われませんでしたが、
案の定、狼狽した様子の駅員さん、すぐに事務所の奥に引っ込みます。
すぐに引っ込まれてしまったので、何の交渉にも入れませんでしたが、
私としては、クレジットカードだけはあったので、
なんとかクレジットカード払いを認めてもらえないか、
もしそれがダメなら支払猶予、しかもここは自宅から離れた新潟なので、
自宅近くの駅にお納めすることで許してもらうか、
もしくは書留等で送金するという方法で改札を出してもらえないか、
とにかく、駅員さんが戻ってきたらその手の交渉をしてみようと、
その場で再び10分待ちました。
改札横の窓口は無人となり、
そこにあんまり長く放置されるもんだから、人目に触れること甚だしく、
そのまま逃げようかと思ったほどですが、社会人としてそこはグッと我慢して待ちます。
人々の好奇の目にさらされながら合計20分ほど待ったころ、
駅員さんが再び登場。
「……今回は大目に見ましょう。」
……❕❔
「次からは寝過ごさないようにということです。」
と、なんと、突如、無罪放免となったのでした。
富山⇔新潟の『新潟自由席往復きっぷ』は、14,000円ほどの往復切符です。
今回の乗り越しでは、本来、1万円ほどの差額が出ているはずであり、
価格のバランスからしても、JRがそれを許すとは少しも思っていなかった私、
この結論は本当に予想外で、びっくりし、
よくよく、その駅員さんにお礼を言って窓口を去ったのでした。
とはいえ、当初の到着時刻よりも2時間近く遅れて駅の外に出た私。
しかも、このようなことがあっても、現金も持っておいたほうがいいだろうかとか、
何かのためにキャッシュカードも持っておこうとか、
自らをそういう方向に改めようとは少しも思いませんでしたので、
教訓があるとすれば、やはり「寝過ごさないように注意しよう」しかありません。
それか、ひと駅前の糸魚川駅までは起きていた覚えがあるので、
「あとひと駅のところで眠りに入らないようにしよう」でしょうか。
というわけで、キャッシュレス全盛のいまどき、現金のみなんてどうかしてるわ!と、
いったんは国鉄体質に憤った私でしたが、
最終的に、優しくしてくださった駅員さんに感謝している私、
現金なものです。
[SE;KICHI]
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